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国民の理解得て合意へ
防衛政策、透明性ある議論を
報告書で政府「与党協議の材料」
公明、懇談会で政府に訴え
年末の「国家安全保障戦略」など安保関連3文書改定に向け、政府の「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」は22日午前、防衛力の抜本的強化に関する報告書を取りまとめ、座長の佐々江賢一郎元駐米大使が首相官邸で岸田文雄首相に提出した。これを踏まえ、政府と自民、公明の与党両党は同日午前、首相官邸で政策懇談会を開き、報告書について意見を交わした。公明党から山口那津男代表、北側一雄副代表、石井啓一幹事長、高木陽介政務調査会長らが出席した。
防衛力整備について意見が交わされた政府・与党政策懇談会=22日 首相官邸
会合では、政府側が報告書の内容を説明。その後の意見交換では、報告書の位置付けを問う与党側の質問に対し松野博一官房長官が「与党で議論をしていただくための資料、材料だ」との見解を示した。
公明党側は、今回の安保関連3文書改定に関して「これまでの防衛政策を大きく転換することになるので、政府の議論より、透明性を持って国民に伝えながら合意をつくる政治、つまり与党の議論が大事だ」と指摘した。
今後の議論では「防衛費全体の規模についても、政治の決定が大事だ。その点の議論をこれからしていかなければならない」との意見を表明。また「国民の理解を得ることが重要であり、この課題について国民に伝わるような努力が求められる」と訴えた。
22日午後に国会内で開かれた党参院議員総会で山口代表は、防衛力整備に関して「年末まで多くの時間があるわけではない。多岐にわたる論点があり、国民の負担にもつながる可能性のある課題であるから、国民の理解を得る十分な努力が必要だ」と述べた。
有識者会議、首相に提言 反撃能力の保有を明記
政府の「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」から報告書を受け取った岸田文雄首相は、座長の佐々江賢一郎氏に対し「貴重な提言を頂いた。必要とされる防衛力の内容、予算、財源について、与党ともしっかりと調整しながら検討を進める」と述べた。
報告書では、反撃能力について「保有と増強が抑止力の維持・向上のために不可欠だ」と明記。防衛力整備の財源については、歳出改革を優先した上で「負担が偏りすぎないよう幅広い税目による負担が必要だ」と指摘した。
佐々江氏はこの後、記者団に、有識者の間で法人税増税が議論になったと説明した上で、「法人税だけに重点を置くことが適切か。幅広く検討することが必要だ」と指摘。反撃能力については「異論はなかったが、なぜ必要か丁寧に説明する必要がある」と述べた。
有識者会議は9月末から計4回開催。中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発など、厳しさを増す日本周辺の安保環境を踏まえ、自衛隊の装備や防衛費の規模、財源などを議論してきた。