ニュース
【主張】米ロ核軍縮 新STARTの協議再開を評価
米国務省のプライス報道官は8日に、ロシアのリャプコフ外務次官は11日に、米ロが締結した新戦略兵器削減条約(新START)の履行を促進する2国間協議を再開することで合意したと発表した。米ロが協働して核軍縮への取り組みを続ける意思が示されたことを評価したい。
2国間協議は昨年10月に開かれて以降、ロシアによるウクライナへの侵略を背景に米ロ間の外交関係が冷え込んだことから、開催が見送られていた。協議は今月下旬から来月上旬の間に開催される見通しだ。
米ロ間の核軍拡競争を抑制する法的枠組みは、今や、新STARTしかない。だからこそ、この条約の履行を米ロが継続することは極めて重要である。
新STARTは、長射程で破壊力の大きい戦略核兵器の削減を米ロに求めており、▽ミサイルに搭載されるなどした配備済みの戦略核弾頭数を1550発以下▽射程5500キロ超の大陸間弾道ミサイル(ICBM)、航続距離8000キロ以上の戦略爆撃機、射程600キロ超の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)など配備済みの運搬手段の数を700以下――まで減らすよう義務付けている。
特筆すべきは、こうした義務を米ロがきちんと果たしているかどうか検証する制度も確立されていることだ。実際、米ロは、新STARTの削減対象となっている配備済みの核弾頭や、その運搬手段となるミサイルなどの所在場所に、互いに査察要員を派遣し、数などの確認を行っている。
ところが、米国がロシアの政府高官らの入国を禁止するなどの制裁を実施していることを理由に、ロシアは8月に米国からの査察要員の受け入れ停止を表明した。査察が行われなくなれば、ロシアの核兵器の配備の実態が分からなくなる。
2国間協議では、相互査察の継続が可能になるよう話し合うという。米国が主張するように、制裁はロシアによる査察を妨げるものではない。ロシアは米国からの査察要員の受け入れを再開すべきだ。