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【主張】性犯罪規定見直し 「不同意」許さずの規範を明確に
「望まない性的な行為は、性的な暴力にあたります」――これは、内閣府男女共同参画局のホームページに掲げられている言葉だ。
2017年施行の改正刑法は110年ぶりに性犯罪を厳罰化したが、“性的な暴力”の立証には困難も多く、厳正な処罰にはさらなる法改正が必要との声が上がっている。政府は20年から再検討を進めているが、性犯罪の実態を踏まえた処罰規定の実現へ、議論を一層深める必要がある。
この再検討は法制審議会(法相の諮問機関)の部会で行われており、諮問された内容は、意思に反する性交などの被害実態に応じた適切な処罰のあり方などである。同部会に先月、法務省から性犯罪規定の改正試案が示され、これから議論が本格化する。
試案には性犯罪被害者の当事者団体が強く求めていた“望まない性的な行為”を処罰するための不同意性交罪の創設は含まれていなかった。「同意があったかどうか」という内心の証明が難しいとの議論を受けた結果だ。
しかし試案は、現行の強制性交等罪が成立するためには「暴行・脅迫」によって抵抗が「著しく困難」な場合との要件について、「暴行・脅迫がなくても恐怖で動けなくなる場合もある」との被害者の声を入れた改正案を示した。具体的には「暴行・脅迫」のほか「心身の障害」「アルコール・薬物の摂取」「意識不明瞭」「拒絶するいとまがない」「恐怖・驚愕」「虐待」「経済的、社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮」の8項目を要件に加えた。
これにより被害者が求めていた、恐怖によって抵抗不能になる状態や、上司や学校の先生からの性犯罪、さらに親からの虐待までも強制性交等罪に問えることになる。
しかし、被害者からは「これでは『不同意の性交は犯罪』とのメッセージが伝わらない」との意見も出ている。これは重要な指摘である。不同意性交の犯罪化について一段踏み込んだ議論を期待したい。