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【主張】長周期地震動 高層階の被害減へ緊急速報に追加
地震の際に超高層の建物などをゆっくりと揺らす「長周期地震動」が、来年2月1日から緊急地震速報の対象に加わる。気象庁が10月26日に発表した。
近年、大都市を中心に高層ビルやタワーマンションが急増し、長周期地震動の影響を受ける可能性がある人が増えている。防災意識を高め、被害の軽減を図る上で、緊急地震速報に加える意義は大きい。
長周期地震動とは、高層ビルの上の階ほど、ゆっくりとした大きな揺れが長く続く現象で、揺れ幅が大きい場合、家具やオフィス機器などが倒れてけがをしたり、エレベーターが故障することがある。
さらに注意したいのは、大地震の時には震源から遠く離れた場所でも、長周期地震動に見舞われる恐れがあることだ。
実際、東日本大震災では震源から約770キロ離れた大阪府の「咲洲庁舎」(55階建て)が、長周期地震動で約10分間揺れ、最上階付近の揺れ幅は最大2.7メートルに達した。発生が切迫している南海トラフ巨大地震でも震源から遠距離にある地域の被害が懸念されている。
現在の緊急地震速報は、最大震度5弱以上の地震が予想される場合などに発表される。新たに追加される長周期地震動については、揺れの大きさを示す4階級のうち、立っているのが困難になる「階級3」と、はわないと動くことができない「階級4」の揺れが予想される地域が対象となる。
こうした指標はなじみが薄く、危機感が伝わりにくいことも想定される。階級ごとの危険度を周知する工夫も必要だ。慌てず身を守ることができるよう、素早い情報発信で警戒を呼び掛けてほしい。
気象庁によると、2000年以降、「階級3」以上の長周期地震動を伴う地震は、3.11や熊本地震など計33回に上る。
長周期地震動への備えは、本来の地震対策と変わらない。家具や機器を適切に固定するなど、日ごろから家庭やオフィスでできる基本的な対策を着実に講じておきたい。