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コラム「北斗七星」
欧州連合(EU)欧州議会は、自由と人権の擁護に貢献した個人や団体を顕彰する今年の「サハロフ賞」を、ウクライナ国民に授与すると発表した◆ロシアの侵略に抵抗するウクライナへの連帯表明にほかならない。同賞は旧ソ連の物理学者で反体制運動家の故サハロフ博士をたたえ創設された。ネルソン・マンデラ氏らが受賞している◆「ソ連水爆の父」と呼ばれたサハロフは、核実験による放射能汚染に対して、自分の責任を感じるようになり、1963年の部分的核実験禁止条約の締結に尽力する◆その後、ソ連の民主化、人権擁護活動に身を投じ、75年にはノーベル平和賞を受賞。しかし80年、ソ連のアフガニスタン軍事介入を批判したことで、全ての国家栄誉をはく奪、流刑される◆「ソ連指導者は、アフガニスタンで敏速に勝利できると考えていたようだ」(『サハロフ回想録』)が、戦況は泥沼化。アフガニスタン侵攻はソ連崩壊の一要因となる◆ゴルバチョフによって解放されたサハロフは一転、「ペレストロイカの父」として復活を果たす。ウクライナで悲劇が繰り返される今、高い倫理観を本分とするロシア最良の精神が、サハロフの名前とともによみがえることを願う。(中)