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【主張】観光船事故から半年 厳罰化など対策強化し再発防げ
北海道・知床半島沖で乗客乗員26人が乗った観光船「KAZU I」が沈没した痛ましい事故の発生から、23日で半年を迎えた。20人が死亡し、いまだ6人の行方は分かっていない。遺族の深い悲しみは察するに余りある。引き続き、行方不明者の捜索とともに、事故原因の究明に全力を尽くしてほしい。
事故後、運航会社のずさんな安全管理が浮き彫りとなり、国は6月に事業許可を取り消した。業務上過失致死容疑で社長らへの捜査が続けられている。
事故を受け、国土交通省は有識者による対策検討委員会を設置し安全対策の強化に向けて議論している。
7月に公表した旅客船の安全対策の中間取りまとめでは①事業者の安全管理体制②国の監査や行政処分③設備要件――の強化など6分野47項目を挙げた。
このうち、事業者に対する抜き打ち監査の実施、法令違反の疑いがある事案の通報窓口の設置、利用者が事業者を選ぶ際の安全情報の提供など14項目については9月末までに実施している。可能な対策から速やかに始めるのは妥当である。
さらに検討委では、小型旅客船の事業許可を5年ごとの更新制にし、安全対策などを記した計画の作成も義務付けることを決めた。今回のように、安全軽視が甚だしい不適格な事業者は排除する必要がある。
行政処分の強化では、法令違反の点数の累積で行政処分を行う制度を創設する。安全運航のために必要な措置を事業者に命じる「安全確保命令」に違反した場合の罰則は、現行の罰金刑に加え、新設予定の拘禁刑を導入する。厳罰化を事業者の安全意識の向上につなげることが大切だ。
このほか、「船舶版ドライブレコーダー」の設置や、最低水温が10度未満になる水域を航行する旅客船などに「救命いかだ」の積載を義務付ける。
検討委は年内に総合的な安全対策をまとめる。安全あっての観光だ。事故を教訓として、再発を防ぐ取り組みを継続的に積み重ねていかねばならない。