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【主張】嫡出推定の見直し 「無戸籍者」防ぐ124年ぶりの法改正
生まれた子どもが「無戸籍者」となるのを防ぐ上で大きな一歩となる法案だ。
「離婚後300日以内に生まれた子は元夫の子」とする「嫡出推定」の見直しを柱とした民法改正案が閣議決定された。
改正案では、離婚後300日以内に生まれた子は元夫の子と見なす規定は維持しつつ、出生時に母親が別の男性と再婚していれば再婚後の夫の子と見なす例外を設けた。
また、嫡出推定を覆す「嫡出否認」の訴えを起こすことができるが、現行法では、その権利は父親にしか認められていなかった。これについて改正案は、母親と子にも認めた。
嫡出推定は、1898年施行の明治民法で採用された制度だ。離婚から300日以内に生まれた子は元夫の子、結婚・再婚から200日後に生まれた子は現夫の子と見なしている。
この制度を124年ぶりに見直すことになった背景に、出生届が提出されない無戸籍者の問題がある。
法務省によると、今年8月時点の無戸籍者は793人に上る。このうち約7割がDV(配偶者などからの暴力)などを理由に、元夫が父親と見なされるのを避けようと母親が出生届を出さなかった。
無戸籍者は、原則として運転免許証の取得や銀行口座の開設などが難しく、進学や就職でも不利益を被り、社会的な孤立に陥る恐れもある。基本的人権に関わる問題にほかならず、対策が求められていた。改正案が成立すれば、無戸籍者を減らすことが期待できる。
ただ、嫡出推定の例外規定は再婚が前提となっているため、今後も無戸籍者が出る可能性は残る。さまざまな事情で出生届を出せない母親に対し、相談窓口などのサポート体制を一層強化する必要がある。
公明党は2007年に無戸籍者問題の解決に向けたプロジェクトチームを設置し、嫡出推定の見直しなどを政府に提言してきた。今国会での法案成立を期すとともに、残る課題の解決にも全力で取り組んでいく。