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【主張】肥料の安定供給 成分豊富な下水汚泥の活用に期待
農林水産省と国土交通省は17日、下水処理の過程で排出される汚泥を農業用の肥料として活用するための官民検討会を開催した。
ロシアによるウクライナ侵略などを受けて国際的に肥料価格が高騰し、わが国でも農家の経営に深刻な影響を及ぼし、食料品価格の上昇にもつながり家計の打撃となっている。
こうした中、肥料の国産化と安定供給に向けた新たな取り組みとして、下水汚泥の活用に注目したい。
国内の農業で広く使われている化学肥料は、その原料のほぼ全量を輸入に頼っている。中でもリンは肥料に必要不可欠なミネラルの一種だが、リンを含む鉱石はロシアや中国など一部地域に偏在している。
そこへウクライナ危機が発生して肥料価格が高騰し、円安が追い打ちをかけている。肥料の安定供給に向け、輸入依存を見直すことは喫緊の課題にほかならない。
政府が活用をめざす下水汚泥には、人のし尿に由来するリンのほか肥料の原料となる成分が豊富に含まれている。
国交省によると、リンの年間需要量約30万トンのうち、約2割に相当する約5万トンが下水汚泥に含まれているという。さらに、国内で生産・輸入される窒素全量の5割に相当する量が下水として流入している。
リンや窒素を下水汚泥から取り出す技術は、ほぼ確立されている。ただ、今のところ肥料として利用される下水汚泥は1割程度にすぎない。
有害物質を含んでいるのではないかといった負のイメージが大きいことや、施設の整備費負担などが要因として挙げられている。官民検討会は、こうした課題を整理して必要な支援策などを議論する方針だ。
肥料の国産化と安定供給は、食料安全保障の点からも重要だ。
このため公明党は今年の参院選政策集で、肥料の国産化に向けた開発・生産・供給体制の構築を進めるよう訴えている。
官民検討会での議論に期待したい。