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2022年10月12日

党勉強会から 日本の安全保障

国家戦略など3文書改定の論点 
防衛力の現状と課題

12月の閣議決定をめざし、政府は安全保障政策に関する基本的な3文書(安保3文書=国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画)の改定準備を進めている。公明党は外交安全保障調査会で3文書改定に向けた勉強会を2月に始めたが、3月半ばからロシアのウクライナ侵略への対応を優先するため中断、8月から再開した。このうち、日本の防衛力の現状と課題について有識者や政府から行ったヒアリングの概要と、議論となった論点を整理した。

新領域への対処

宇宙・サイバー空間で自衛隊の体制は不十分

「スピード感を持って防衛力を抜本的に強化する」

岸田文雄首相は1月の施政方針演説でこう訴えた。

政府は党の勉強会で強化すべき分野として、陸海空に対して新領域と位置付けられる宇宙・サイバー・電磁波(レーダーなど)への対処能力を挙げた。

政府は2013年12月に閣議決定した「国家安全保障戦略」(戦略)で、宇宙空間について「情報収集や警戒監視機能の強化、軍事のための通信手段の確保等、近年は安全保障上も、その重要性が著しく増大している」と指摘。サイバー空間についても「国家の秘密情報の窃取、基幹的な社会インフラシステムの破壊、軍事システムの妨害を意図したサイバー攻撃等によるリスクが深刻化しつつある」と訴えている。

同戦略から5年後の18年12月に閣議決定された「防衛計画の大綱」も「宇宙・サイバー・電磁波を含む全ての領域における能力を有機的に融合」して「真に実効的な防衛力として、多次元統合防衛力を構築」すると明記している。

防衛省は、陸海空と宇宙・サイバー・電磁波の全ての領域の能力を融合させて得られる相乗効果により、全体として能力を増幅させることが可能であり、個別の領域で能力が劣勢であってもそれを克服できると強調している。

しかし宇宙に関しては、通信、測位、早期警戒、偵察に使われる安全保障に必要な衛星のうち偵察衛星だけを見ても、12年の時点で日本は5、中国は26、米国は30。それが21年時点では日本は8、中国は70、米国は44と差は開いている。

防衛省はサイバーセキュリティーの確保なしに安全保障上の優勢は確保できないと訴えるが自衛隊はここでも劣勢だ。英国の「国際戦略研究所」が15カ国の調査に基づき21年6月に公表した報告書「サイバー能力と国力」によると、日本は3分類のうち評価の低い第3層で「民間による情報共有が米英に比べ弱い」「攻撃的サイバー能力は、憲法と政治上の制約から遅れている」と指摘された。

サイバー部隊の規模を見ても、自衛隊サイバー防衛の中核的部隊は890人、米国のサイバー任務部隊は6200人に増員予定、中国のサイバー攻撃部隊は3万人という現状である。

軍事の基盤整備

生産・技術力の強化と継戦能力の向上も必要

「自衛隊の将来を見据えた装備品の開発・生産・維持を確保する基盤は『防衛力そのもの』だ」

防衛装備庁は防衛産業の重要性についてこう訴えているが、党の勉強会で示された防衛産業の現状は厳しい内容だった。

同庁によると、防衛産業を担ってきた企業の事業撤退が相次ぎ、新規参入も低調で適正な競争環境が失われイノベーション(技術革新)の欠如が懸念されているという。

「今後の受注見込みが立たない」(戦闘機部品の製造企業)

「開発コストに見合った利益が出ない」(装甲車両の開発・製造企業)

「売り上げが少なく技術者の確保が難しい」(次期機関銃の開発企業)

これらが事業撤退の理由だ。一方、企業が新規参入をためらう理由として同庁は、利益率が上がらないことを挙げた。具体的には①製品は自衛隊だけに納入するため少量でスケールメリットがない②4~5年必要な製造期間中の賃金・物価上昇分が反映されない③調達が不定期で毎年一定数にならない――などで、開発態勢と製造ラインの維持にコストがかかるからだ。

政府は国内の防衛生産と技術基盤を維持・強化する方針であり、困難な課題に向き合う必要がある。

「有事に自衛隊が相手の武力攻撃を跳ね返すまで戦えるか」という継戦能力の問題も重要だ。

継戦能力について防衛省は、有事の状況を分析し、米軍の来援を考慮せず、対処に必要な弾薬(ミサイルを含む)量を算出した結果、約4割が不足していると答えた。何日間戦えるかの量ではなく、状況対処に必要な量の不足分だ。

砲弾類は国内調達だが、一部のミサイルは海外調達だ。ミサイル調達には3~4年必要なため有事になってからでは間に合わない。

燃料の備蓄もあるが、想定される事態に応じて変化するため、常に保有量の検討が必要になる。

一方、航空機や艦艇など装備品の稼働率は8~9割から5割未満までさまざまだ。「故障による非稼働ゼロ」が理想だが、部品調達など防衛産業の基盤整備とも関わる問題である。

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