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安全・安心の基盤強化を
山口代表、石井幹事長の代表質問から
公明党の山口那津男代表と石井啓一幹事長は6、7の両日、衆参両院の本会議で岸田文雄首相の所信表明演説に対する代表質問を行いました。コロナ禍や物価高騰などによる国民の先行き不安を払拭し、安全・安心の基盤を強化するため、公明党が訴えた主張のポイントと、識者の声を紹介します。
■経済対策■ 電気・ガス代の負担減らせ 観光、飲食業の需要喚起策を強力に
山口代表は、国民生活を直撃する電気料金の高騰を取り上げ、岸田首相が表明した「前例のない、思い切った対策」について「生活者や事業者が負担軽減を実感できる制度設計を」と強調。ガス料金の高騰を抑え込む支援策についても検討を求めました。
また山口代表は、コロナ禍に加え、円安、原油・物価高騰の影響で、厳しい経営環境にある中小企業が、下請け取引で適正に価格交渉・価格転嫁できるよう、きめ細かい実効性ある施策の実行を力説。石井幹事長は、実質無利子・無担保融資の返済支援を要請し、岸田首相は「返済本格化に向けて、借換保証の創設を検討する」と答えました。
需要が落ち込む観光・飲食業について、石井幹事長は全国旅行支援などに加え、飲食店の需要喚起策を「全国で強力に実施すべきだ」と主張。さらに「景気を上向かせるには、持続的な賃上げが欠かせない」と強調し、中小企業への事業再構築補助金などを通じ、脱炭素化やデジタル化へ思い切った投資を促すことで、生産性向上や成長を図る重要性に言及しました。
「人への投資」の観点では、山口代表が、公明党の推進で今年度策定された「女性デジタル人材育成プラン」を踏まえ、「迅速かつ重点的に実施できるよう『地域女性活躍推進交付金』を拡充し、しっかりと後押しすべきだ」と訴えました。
■感染症への備え■ ワクチンの開発・生産を国内で
新型コロナ対策で石井幹事長は、検査・医療提供体制の強化や国産飲み薬の実用化、インフルエンザとの同時流行への備えを要請。岸田首相は国産飲み薬に関し、「第3相試験(最終段階の治験)で良好な結果が得られた。詳細データの提出を受け、速やかに審査を進める」と応じました。
山口代表は、次の感染症危機に備えるため、今国会に提出された感染症法改正案に関し、検査能力の強化と、病床や医療人材の確保を踏まえた実効性ある改正にする必要があると主張しました。また、ワクチンについて、日本に製造拠点を整備する意向を示す海外メーカーが出てきた状況などを挙げつつ、国家戦略として「国内の開発・生産体制を構築することは極めて重要だ」と訴えました。
■社会保障■ 妊娠期から支援切れ目なく
石井幹事長は、幼稚園・保育所などを利用しない未就園児が約6割に上る現状などを挙げ、「妊娠期から0~2歳までの切れ目ない支援を優先的に充実するべきだ」と訴えました。山口代表は、出産育児一時金の大幅増額を求め、岸田首相から「大幅な増額を早急に図る」との回答を得ました。
給付型奨学金の拡充や奨学金を柔軟に返還できる仕組みを巡り、石井幹事長は、年収基準を含めた制度のあり方の検討を要請しました。
山口代表は、育児休業給付の対象にならないフリーランスらへの新たな支援の仕組みを検討するよう提案。岸田首相は「年末に向けて議論を進める」と答えました。
■外交・安全保障■ ウクライナ、寒さ対策が急務
山口代表は、先月の党調査団の成果を踏まえ、ロシアからの侵略を受けるウクライナへの人道支援に言及。「冬場を前に寒さ対策が急務であり、住宅や暖房施設、学校、医療、インフラの復旧が必要だ」と指摘し、政府の総合経済対策に盛り込むよう提案しました。核軍縮に向けては、来年、広島で行われるG7サミット(先進7カ国首脳会議)などで、世界の指導者が被爆の実相に直接触れる機会の創出を求めました。
「国家安全保障戦略」など防衛3文書の改定に向け、石井幹事長は党として国民の理解が得られるよう議論を進めていく考えを強調。「(防衛費は)始めから規模ありきではなく、真に必要な予算を総合的な観点で組み上げてもらいたい」と要請しました。
■防災・減災■ 「5か年」後も継続すべき
石井幹事長は、2021年度に始まった「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」が終了した後も、通常予算とは別枠で対策を継続すべきだと主張。岸田首相は、国土強靱化のための新たな基本計画を策定する考えを表明しました。斉藤鉄夫国土交通相(公明党)も「中長期的かつ明確な見通しの下、計画的に進めることが必要だ」と述べました。
災害時に住民の避難行動を支援するタイムライン(防災行動計画)について、山口代表は、政府が6月に防災基本計画を改定し、市区町村などに策定を求めたことを評価した上で、「全国的に推進するべきだ」と提案。斉藤国交相は「全国的なタイムラインの作成や活用を推進していく」と答えました。
■生物多様性■ COP15で議論リード
生物多様性の損失を食い止めるため、2030年までに陸と海の30%以上の生態系を保全する目標「サーティー・バイ・サーティー(30by30)」の達成について、日本を含むG7(先進7カ国)各国が昨年、約束しました。山口代表はこれに触れた上で、今年12月に開催される生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)に言及し、「目標の達成に向け、日本が先進的な知見と経験を生かし、議論をリードすべきだ」と訴えました。
識者の声
■持続的で十分な賃上げ必要■ 東京都立大学 脇田成教授
食料品などの値上げが止まらず、このまま消費者物価指数が3%を超えてくると、かつて消費税率が5%から8%に引き上げられた時と同じように、消費の冷え込みが懸念されます。公明党が主張した通り、物価高騰を乗り越えて景気を上向かせるには持続的な賃上げが不可欠です。加えて十分な額であることが絶対に必要です。
一般に、労働生産性(従業員1人当たりの付加価値額)が伸びないと賃上げできないとの見解がありますが、必ずしも正しくありません。問題なのは労働生産性の伸びに比べ、賃金の伸びが大きく下回っている現状です。加えて今回は円安に伴う輸入物価高です。そのため、海外部門の割合が大きい大企業が恩恵を受ける一方、輸入企業や中小企業、家計は非常に苦しい。
政府には、こうした弱い立場に配慮した、積極的な関与が求められます。公明党が国会論戦を通じ、それをリードしてくれることを望んでいます。
■患者の命守る大事な提案■ 埼玉医科大学 中元秀友教授
今後の新たな感染症のまん延などを想定すると、今まで以上に「予防→検査→治療」という三つの流れを整えることが重要です。とりわけ、公明党が訴えた、速やかなワクチン生産・供給に向けた国内生産拠点の整備は、“感染症に弱い人”の命を守ることに直結する極めて大事な提案です。
私が理事長を務めていた日本透析医学会などによる調査では、コロナ感染による透析患者の死亡率は、一般の人と比べて20~40倍に上っています。感染した患者が容体を急激に悪化させ、亡くなる光景を、医療現場で何度も目の当たりにしてきました。変異株に対応したワクチンが必要な人たちに行き渡れば、これからも多くの命が救われるに違いありません。
海外の製薬メーカーが日本国内にワクチン製造拠点の整備を検討している中、感染症に強い国造りに向け、公明党の主張が確実に実を結ぶことを願っています。
■早期の子育て支援を評価■ 東京大学 山口慎太郎教授
公明党が子育て支援を最優先課題として捉え、通常イメージするよりも早い時期からの子育て支援、つまり“妊娠期から0~2歳までの切れ目ない支援”に注目し、優先的に充実するよう政府に求めていることを高く評価したい。
この時期の重要性は、国際的な学術研究からも支持されるところです。例えば、妊娠期に母親が経済的に困窮し栄養不足に陥ると、生まれてきた子どもの健康を長期間、害することが分かっています。だからこそ出産育児一時金の増額が大事になってきます。
また、保育所を利用できる世帯が限定されている現行制度を改め、親の働き方にかかわらず、全ての子育て世帯が利用できるようにすることも、非常に大事な子育て支援です。子どもの発達にプラスになるだけでなく、母親らの孤立化を防ぐことにもつながります。これらの支援にかかる財源の確保を含め、公明党の頑張りに期待したい。