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療養中の高校生を応援
オンライン授業参加へ端末スタンド貸し出し
愛知県
愛知県は本年度から、療養中のため通学できない高校生がオンラインで授業に参加できるよう、タブレット端末用のスタンド「kubi」を貸し出している。患者と保護者のニーズを聞き取る「医教連携コーディネーター」も設けた。公明党の県議団(木藤俊郎団長)と沢田晃一・名古屋市議が当事者の声を県に伝え、推進してきた。
■教室内を見回せる機能
kubiの遠隔操作について説明を受ける(右から)沢田市議、加藤、木藤、犬飼の各県議
kubiはタブレット端末をセットして教室に置き、病室にいる生徒が遠隔操作する。その場で自分の“首”を動かすように黒板、教師、生徒たちなど見たい方向に動かすことができる。県はkubi10台を導入。無料で貸し出しており、現在、県立高校2校で2人が使っている。医教連携コーディネーターは生徒、保護者、学校、医療関係者などから相談を受け、入院中でも生徒が学習できるよう調整する。どちらも市立・私立の高校も対象。県はこの内容を掲載したパンフレットを作成し、学校や病院で配布している。
この事業が実現するきっかけとなったのは昨年7月、沢田市議が受けた相談だった。声を寄せたのは県内の小児科医師らで構成する「病気療養中の高校生のオンラインによる授業参加を実現する会」代表発起人の堀部敬三氏(国立病院機構名古屋医療センター上席研究員)。同氏は、小中学生については院内学級などで治療と教育を両立する体制が整っている一方、高校生に関しては教育のサポートが少ないことを述べ、「双方向型のオンライン授業の体制を整備できないか」と訴えた。
沢田市議は公明党の犬飼明佳県議と共に堀部氏から改めて状況を聞き、翌8月、党県議団と沢田市議の橋渡しで、堀部氏らと大村秀章知事の面会が実現。当時、県立一宮高校3年生で、国の制度でkubiの貸与を受け、活用していた今津樹音さんもオンラインで参加し「入院、闘病していても学校の授業に参加できるシステムをつくってほしい」と求めた。翌9月の県議会では、公明党の加藤貴志県議がオンライン授業の体制整備を訴えた。パンフレットは犬飼県議の提案で作成された。
党県議団と沢田市議はこのほど、医教連携コーディネーターを配置した県立大府特別支援学校を訪れ、学校関係者と意見交換。オンライン参加の今津さんにも話を聞いた。進学に向けて猛勉強中の今津さんは「どんな状況でも授業を受けられるのは本当にうれしい」と語った。
犬飼県議は「誰一人取り残されない教育を実現するため、療養中の生徒への支援を今後も進めていく」と話した。
■「独学で追い付くのは困難」
今津さんは高校2年生のときに国指定難病の「成人スチル病」と診断され、通学が難しくなった。
入院中の県立高校生徒に対して県は訪問教育を実施してきたが、コロナ禍で中止に。「闘病中に独学で学校の勉強に追い付くのは難しい」と感じた今津さんはこの状況を病院のソーシャルワーカーに相談。関係者の尽力もあって、堀部氏らが国の補助を受けて進めていたkubiの貸与事業を利用した。今回、県が10台導入したことに対し、今津さんは「このシステムが広がれば、たくさんの人が助かる」と期待を述べた。