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【主張】経済安全保障 国際的リスクから供給網を守る
国際紛争や感染症拡大によって貿易が停滞したり、また、エネルギーやレアアース(希土類)など日本経済を支える物資の調達が特定の国の意図的判断で阻害されるリスクが存在していることは、コロナ禍やロシアのウクライナ侵略で一層鮮明になった。
こうしたリスクに対処するため、政府は外交・防衛を柱とする安全保障政策の裾野を経済にも広げる「経済安全保障」の体制を早期に確立する必要がある。
政府は8月に部分施行された経済安全保障推進法に基づき、法運用に関する基本方針と、サプライチェーン(供給網)確保と特定重要技術の開発支援に関するそれぞれの基本指針を先月末に閣議決定した。
まず基本方針では、経済安保について「市場や競争に過度に委ねず、政府が支援と規制の両面で一層の関与を行っていく」との姿勢が明示された。
これにより供給網確保の場合、今は企業が経済的判断だけで調達先を選択できる物資であっても、それが政府によって特定重要物資に指定されると、供給源の多様化や備蓄のあり方、さらには代替物資の開発などに関する計画を策定しなければならなくなる。
ただ、推進法の策定段階で与党は、自由経済と民間活力による経済発展を基本とすることの重要性を強調。特に公明党の主張で、推進法第5条に民間の負担となる規制は「安全保障を確保するため合理的に必要と認められる限度において」行うと明記された。
それを受け供給網確保の基本指針は、政府が特定重要物資を指定する際、重要性、外部依存性、供給途絶の蓋然性、規制措置を講ずる必要性の4要件で絞り込むよう定めた。製造業に不可欠な半導体や国民の生命を守る医薬品などが想定されている。
一方、将来の日本を支える先端技術である特定重要技術に関する基本指針は、官民協力による研究開発支援の推進を掲げた。
民間に対する支援と規制のバランスの取れた政策体系の構築を求めたい。