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ヤングケアラーへの理解深める集い
不安に寄り添う支援を
兵庫県
誰も取り残されることのない社会へ――。兵庫県はこのほど、本来は大人が担うような家事や家族の世話などを日常的に行う子どもや若者「ヤングケアラー」への理解を深めるシンポジウムを神戸市内で初開催した。当日はオンラインを含め、県内の学校や福祉施設、自治体関係者ら約250人が参加し、推進した兵庫県議会公明党・県民会議(伊藤勝正幹事長)のメンバーも駆け付けた。
研究第一人者が基調講演
会場で県担当者から話を聞く(右から)竹尾、芦田、小泉の各県議
シンポジウムでは、ヤングケアラー研究の第一人者として知られる濱島淑惠・大阪歯科大学教授が基調講演を行った。
濱島教授は、「お手伝い」の域を超えたケアを担うことで、通学や勉強、人間関係、健康面などに与える影響の大きさを実例を交えて紹介。特に、20歳前後においては「進学や就職など“自分の人生”を始めていく(独り立ちの)スタート地点。そこでケアが重なると人生への影響は非常に大きく、30歳代になっても尾を引くことが多い」と述べ、早い段階からの支援の重要性を訴えた。
その上で、具体的には、▽障がいや介護、病気など親や家族が抱える「しんどさ」を含めた周囲の気付きと理解の促進▽学習支援や当事者同士の交流、レスパイト(休息)サービスの充実▽日々の不安や雑多な困り事に対する寄り添い支援――などの取り組みを社会全体で進めていく必要があるとした。
一方、ヤングケアラーがケアの重圧から解放された途端、体調を崩したり喪失感に見舞われたりするなど“介護ロス”のような状態に陥るケースが少なくないと指摘。「ケアが終わったからといって、すぐに自分の全てを取り戻せるわけではない」とし、“元ヤングケアラー”を支える視点も欠かせないと語った。
パネルディスカッションでは、濱島教授がコーディネーター役を務め、教育や福祉、自治体関係者がヤングケアラー支援のあり方を巡り議論を交わした。
この中で、尼崎市教育委員会でスクールソーシャルワーカーとして働く黒光さおりさんは、学校現場の現状に言及。「(ヤングケアラーの)気付きの入り口は先生だが、忙しくて余裕がない」と実情を訴え、教員の働き方改革にも取り組む必要があると語った。このほか、パネリストからは、日本において「ヤングケアラー」という言葉が「かわいそう」というイメージで受け止められがちな風潮に警鐘が鳴らされた。
濱島教授は、ヤングケアラーの問題を通じて「すべての人が生きやすい社会をつくること、無関心をやめることが大事。私たちの社会のあり方そのものが問われている」と結んだ。
公明、開催後押し
ヤングケアラー支援のあり方を巡り意見が交わされたシンポジウム
今回のシンポジウム開催に当たっては、今年6月の定例会質疑で公明党の小泉弘喜県議がヤングケアラーの認知度向上を訴え、県当局から今秋に開催するとの答弁を引き出していた。
また、ヤングケアラー支援の強化に向けては、党兵庫県本部女性局として昨年1月に濱島教授(当時は准教授)を講師に勉強会を開催して以来、各市町での取り組みを後押し。県議会公明党・県民会議としても、2022年度予算要望においてヤングケアラー専用の相談窓口の設置を訴え、6月から開設するなど支援の動きが広がり始めている。
聴講した芦田賀津美、竹尾智枝、小泉の各県議は、「誰一人取り残さない社会の実現に向けて今後も全力を尽くす」と話していた。