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第14回 公明党全国大会 幹事長報告(全文)
25日に開催された第14回公明党全国大会での幹事長報告(全文)を掲載する。
はじめに
立党精神60年から結党60年へ
「大衆とともに語り、大衆とともに戦い、大衆の中に死んでいく」との立党精神は1962(昭和37)年9月13日、公明党の前身である公明政治連盟(公政連)第1回全国大会で党創立者である池田大作・創価学会名誉会長が示されました。以来60年、立党精神は公明党にとって不変の原点として、いつの時代でも公明党議員一人一人の胸に深く刻まれ、脈々と受け継がれてきました。「庶民の声を代弁する政党や政治家はいないのか」との“衆望”を担い誕生した公明党は、自民党と社会党(当時)による55年体制の下、不毛なイデオロギー対決に明け暮れた政治を庶民の手に取り戻し、一貫して大衆福祉や政界浄化など政治の改革に挑むことで日本政治史に大きな役割と足跡を残してきました。
同時に、それは立党精神を体現する公明議員の不断の努力、すなわち、同大会で党創立者が示された「団結第一」「大衆直結」「たゆまざる自己研さん」の不断の実践の結晶とも言えます。
立党精神なくして公明党の存在意義はありません。全ての公明議員は、誇るべき立党精神を今一度、胸にたぎらせ、人格と見識を磨き、「庶民と地域を照らす太陽」としての使命を果たし抜いていこうではありませんか。
立党精神の現代的意義
立党精神は、民主主義を支える重要な規範とも言えます。今は各種の世論調査で明らかなように政治に対する国民の信頼度が低く、関心も薄れ、当事者意識の乏しい“おまかせ民主主義”と称されるなど民主主義の停滞、政治の漂流が懸念されています。
民主主義にとって必要なことは、何より政治への信頼であります。そのためには、国民、大衆の声を代弁し、政治に生かす政党の存在が欠かせません。求められているのは、生活現場で庶民に寄り添い、小さな声から政策を練り上げていく政党の地道な取り組みです。公明党には、地方議員、国会議員のネットワークに加え、党の宝であり、最大のエンジンである党員、支持者との連携があります。国民の声を政策や政治判断に生かす、このネットワークの力が恒常的に発揮できる政党は公明党以外にありません。
国民の声を実現する公明党こそ民主主義の理念を実践する政党であり、担い手です。公明党への高い評価は、党の取り組みが社会の利益につながっていると受け止められているからにほかなりません。
公明党は「大衆とともに」の立党精神を体現して国民の信頼に基づく政治を築き、わが国の民主主義の機能を発展させていく決意です。
今こそ人間主義・中道主義の政治を
今年は自民、公明両党が初めて連立政権合意を交わしてから23年を迎え、与党として共に政権を担って通算約20年、民主党から政権を奪還して10年になります。自公連立政権は、自民党の保守主義と公明党の中道主義の組み合わせによって運営され、「安定した連立の枠組みは自公しかありません。この枠組みがしっかりと機能することが、当面の日本政治にとって必要なこと」(月刊誌「潮」2022年7月号で中北浩爾・一橋大学教授)と評価されるまでに至りました。
公明党は、党綱領に中道主義を明記した唯一の政党です。公明党が理念として掲げる中道主義は「<生命・生活・生存>を最大に尊重する人間主義」、つまり、人権・生命を尊重し、生活者、人類の生存を守り抜く政治の実現にほかなりません。その中には、反戦平和、社会的公正という意味が込められています。
現在、猛威を振るう新型コロナウイルスや、核兵器による威嚇を辞さないロシアのウクライナ侵略、各国で大災害の遠因となっている地球温暖化などによって、人類の生存は幾多もの危機に直面しています。今、世界は、危機の深刻化がポピュリズムを生み出し、社会の分断を加速しかねない激動の時代の渦中にあります。今ほど「生命の尊厳性」という視座を一切の根本に置く中道主義の政治が重要な時はありません。
政治路線としての中道は、日本の政治の座標軸の役割を担うべく、①左右の揺れの偏ぱを正す②不毛な対立を避け、国民的な合意形成に尽力する③諸課題に対し、時代の変化に応じた解決のための建設的、クリエーティブ(創造的)な政策提言を行う――との三つを基本としています。こうした視座・手法を政権内に反映させ、例えば、社会保障と税の一体改革や平和安全法制など国論を二分する課題に対しても、公明党は中道政治の真価を発揮し、社会の分断を防ぐ役割を果たしてきました。識者が「社会が変容し、公明党的な中道の価値観が周縁から中心に移ってきた」「人間主義の価値観に基づいた政策を創造し、実現できる政党は、日本で公明党だけ」(作家の佐藤優氏)と分析しているように、中道主義は時代の要請であり、中道主義の政治をめざす公明党の役割は、いつにもまして大きいと自覚しなくてはなりません。
自公連立政権は、この20年、議員の数的多数を形成するだけでなく、多様な民意を拾い、政権運営に生かすことで質的側面でも社会的、政治的に安定を促す政治を定着させてきました。引き続き、公明党は自公連立政権の一翼を担いながら、中道の理念、中道の政治路線の原則を踏まえつつ、わが国の政治の向上・発展を期していきます。
地域に飛び込み党勢拡大の大波
当面、私たちがめざすべきは、2年後の結党60年の節目を迎える次の党大会です。今回の党大会には、その出発の意義も込められています。公明党の全議員が結束も固く地域に飛び込み、現場からの政策実現にまい進してまいりたい。同時に、党勢拡大へ闘い抜き、来年の最大の政治決戦である統一地方選挙、統一外地方選挙の全てに勝利し、より強靱な党を築いていこうではありませんか。
日本と世界を取り巻く「多重危機」
新型コロナのパンデミック
世界は今、多重危機とも言うべき事態に直面しています。新型コロナウイルスがもたらした地球規模でのパンデミック危機や、ロシアによるウクライナ侵略がもたらす危機、自然災害の激甚化といった多大な影響を招く地球温暖化の危機などです。特にコロナ禍は、人口減少・少子高齢化をはじめとする日本社会が抱える構造的な課題を顕在化、加速化させています。
新型コロナウイルスのパンデミックは3年目を迎えましたが、この間、“人類の英知”“科学の進歩”を実感したことは間違いありません。まず挙げられるのは、ワクチンや治療薬の短期間での実用化です。重症化リスクが抑えられるようになったことで、「ウィズコロナ」の視点で感染防止対策を講じつつ、社会経済活動の本格的な回復を図る局面に移ってきました。
日本では、医療従事者の懸命な努力や国民を挙げた感染拡大防止対策への協力にも支えられた結果、死亡者数は主要国と比べて低い水準となっています。一方で、多くの国民の生活や事業は大きなダメージを受ける中、さまざまな課題が浮き彫りになっています。
課題の一つは医療安全保障の視点に立った取り組みの強化です。コロナ禍では、海外からのワクチン供給の遅れに加え、治療薬などの確保が不安視される局面がありました。“次の感染症”を見据え、医薬品などの国産化、国内製造を国家戦略として進めることが急務です。
その際には、地球規模での感染症対策の前進へ投資や助言などを行う国際的な機関との連携も重要になります。
国内で生産・備蓄している天然痘ワクチンが、欧米を中心に広がる感染症「サル痘」の発症予防などに活用される運びになったように、平時からワクチンをはじめとする各種医薬品などの備蓄も大切です。
わが国の医療提供体制の脆弱性も浮き彫りになりました。感染急増で全国の多くの保健所で対応が困難になり、発熱外来など初期対応に当たる医療機関や中等症・重症患者を収容する病床なども不足しました。その一因にもなったのが、医師や看護師などの人員不足や感染症の専門医不足です。これらの課題について、現場の声も十分に聞いた上で集約し、あらゆる感染症に対応できる体制を構築する必要があります。
現代の感染症を抑え込むには、よりグローバルな視点での協力体制も求められます。今回のパンデミックを通して、地球規模で生命・生活・生存を脅かす脅威のリスクが高まっている現実が突き付けられました。今こそ、「人間の安全保障」に焦点を当てた各国の連帯・協調が求められています。
公明党は、今回のパンデミックの初期段階からコロナ禍に挑む取り組みをリードしてきました。ワクチンを海外から確保する道を開き、円滑・迅速な接種を強力に後押しするとともに、治療薬の早期承認や確保、パルスオキシメーターの自宅・宿泊療養での活用など、命を守る対策を実現してきました。1人一律10万円の特別給付金や、失業を抑えた雇用調整助成金特例措置の拡充・継続、事業者への給付金など、暮らしや仕事を守る対策を前進させたのも公明党です。
「ウィズコロナ」の局面に入る中、社会経済活動の本格的な回復を図りつつ、どう感染収束に向かっていくのかが問われます。科学的知見を重視し、専門家と連携しながら、引き続き積極的に提言するなどして、政府の取り組みをリードしていく決意です。
ロシアのウクライナ侵略
ロシアによるウクライナへの侵略危機は長期化の様相を呈しています。まさに今、法やルールに基づき築かれてきた戦後の国際秩序が、かつてない挑戦を受けていると言っても過言ではありません。時代に逆行するかのようなロシアの横暴を目の当たりにし、民主主義や人権といった価値観を共有する国々は、力を信奉する権威主義国家とどう向き合うべきか。その姿勢が問われています。
また、ロシアのプーチン大統領が戦局の打開へ核兵器の使用も辞さない構えを示唆するなど、「核兵器が使用されるリスクが冷戦以降で最も高まっている」(ストックホルム国際平和研究所)という危機的状況に直面しています。一方で、ウクライナ侵略の影響が日本の生活現場を直撃している事態も看過できません。原材料やエネルギー資源などの価格が上昇する「コストプッシュインフレ」により、食料品や生活必需品などの値上げが続き、国民からは悲鳴に似た声が上がっております。国民の懸念を払拭し、生活の圧迫状況を和らげるために、実効性ある対策を切れ目なく講じていかねばなりません。
日本の構造的危機の顕在化
多重危機に世界があえぐ中で、とりわけコロナ禍は、日本の構造的かつ中長期的な課題をひときわ顕在化させました。例えば、非正規雇用で働く女性など社会的弱者の立場は一層苦しくなっており、コロナ禍に加え、ウクライナ危機のあおりを受けた物価高騰などが追い打ちを掛けています。社会的弱者の態様については、ひとり親や高齢者の単身世帯などの増加により、以前にも増して多様化が進んでいます。弱者を支援するための制度の複雑化も新たな問題となってきました。コロナ禍前から指摘されていた経済的格差の拡大や、社会的孤立によるひずみの顕在化が懸念されます。
多重危機の中、社会情勢は混迷し、先行きの見えない不安が国民と社会全体を覆っています。この閉塞感が根源となり、個人消費や投資の落ち込みが続き、長期にわたる経済の低成長をもたらしています。低成長がこのまま続けば、社会保障制度の持続性も揺らぎかねません。「先行き不安」を克服するための確たる処方せんが必要です。
日本の構造的課題を着実に解決・改善していく上では、女性や高齢者、障がい者らが、それぞれの能力・特性に応じて力を発揮し働ける「包摂的な社会」をつくることで、結果的に国の持続的な成長が担保されます。これについては2014年、主要20カ国・地域(G20)の労働雇用大臣会合の席上、リーマン・ショック後に経済を再建できた国の成功要因として指摘され、国連のSDGs(持続可能な開発目標)にも「包摂的かつ持続可能な経済成長」がうたわれています。包摂的な社会の基盤となるのは、人々の結び付き、「絆」の強さにほかなりません。10年後、20年後、未曽有の超高齢時代へ向け、「生きづらさ」を抱えた人たちが孤立しないよう、今こそ、皆が互いに個性を尊重し合い、支え合う、新しい「絆社会」の構築が求められています。
危機の時代を乗り越える(内政)
「安心と希望の『絆社会』2040ビジョン」(仮称)策定へ
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2025年に団塊の世代が全員、75歳以上になり、全人口の約18%を後期高齢者が占めるようになります。その後、40年ごろに高齢者人口がピークを迎える一方で、社会保障の主な支え手である現役世代(15~64歳)は、この15年間に約1200万人も減少する見込みです。
人口構造の激変に対応し、医療、介護などの給付と負担のバランスをどう取っていくのか、社会保障のトータルな改革をどう進めていくのかが、極めて重要な課題になってきました。国民の先行き不安を解消し、安心と希望をもたらすため、今こそ政治は確かな将来ビジョンを示さなければなりません。
これまで、わが党は、子どもからお年寄りまで必要な支援が行き渡る全世代型社会保障の構築に取り組んできました。これを飛躍的に前進させ、40年までの諸課題を克服する新たな構想として、「安心と希望の『絆社会』 2040ビジョン」(仮称)の策定に取り組んでいきたい。
このビジョンの作成に当たっては、前回党大会の幹事長報告を受け、党青年委員会を中心に議論してきたベーシック・サービス(BS)の考え方等を踏まえて検討していきます。
提唱者の井手英策・慶応義塾大学教授によるとBSは、教育、医療、介護など人間が生きていく上で不可欠なサービスを無償化し、すべての人が平等に受けられる社会を目標とし、それを実現するために負担を皆で分かち合うことをめざしています。特定の誰かではなく、あらゆる人間の尊厳を守り抜く公明党の「大衆福祉」の理念とも共鳴する考え方だと思います。
現在、作成中の「子育て応援トータルプラン」は、2040ビジョンの先行施策と位置付け、新しい「絆社会」への突破口を開く試みとして全力で具体化していきたい。年内に完成させ、実現をめざします。
新しいビジョンの策定に当たっては、教育や医療、介護などの望ましい給付のあり方、各分野の効率化や改革の優先順位などについて検討します。その上で、財源や負担のあり方に関して議論し、40年までの社会保障改革の大きな流れを示す包括的なビジョンとして、23年度中をめどに仕上げたいと考えています。
新しいビジョンの策定は、この国のカタチを決める一大プロジェクトであり、「福祉の党・公明党」の真価が問われると言っても過言ではありません。地方議員、党員、支持者、さらに幅広く国民の皆さまと意見交換を行い、党の総力を挙げて、何としても安心と希望の社会像を創り上げようではありませんか。
中小企業を軸に経済再生
長引くコロナ禍やウクライナ危機に伴う物価高騰で傷んだ日本経済をどう再生していくのか。われわれは、世界市場に展開する大企業だけではなく、身近な地域の「成長の源泉」に着目し、その可能性を最大限に引き出していきたい。そのために、中小企業への支援強化と「人への投資」の抜本拡充に全力を挙げます。
中小企業は国内雇用の約7割を抱え、企業が生み出す付加価値額の約5割を占める、日本経済の“屋台骨”です。「日本経済復興の本丸はローカル経済圏」(冨山和彦・日本共創プラットフォーム代表取締役社長)との指摘もある通り、地域経済を支える中小企業の再生なくして日本経済の再生はありません。コロナ禍や物価高による打撃を受けた中小企業の経営安定化に向け、多岐にわたる支援を早急に実施します。
経済を成長軌道に乗せるのに不可欠な「持続的な賃上げ」については、小規模事業者を含む中小企業が賃上げしやすい環境を整えることが、実現の鍵を握ります。同時に、賃上げを含む分配の原資を生み出すには、経済成長が欠かせません。デジタル技術の活用や成長産業の育成、イノベーションの促進などを進め、「経済のパイ拡大」と「賃上げ」の両輪で取り組んでまいります。
経済再生を担うのは、どこまでいっても「人」であり、一人一人が能力を最大限に発揮できるよう、国が全力でバックアップし、人材立国をめざすべきです。そのためには、リカレント教育(社会人の学び直し)や職業訓練などの「人への投資」を抜本的に拡充しなければなりません。
特に重視すべきは、本人が望まない形で非正規雇用となっている労働者への支援です。正規雇用と非正規雇用との間にある不合理な待遇格差の解消を進めるとともに、ジョブ型正社員や短時間正社員など多様な正社員制度の導入や、労働者のニーズに応えられる一層の働き方改革を推進し、希望する方に正規雇用を実現する社会をめざします。
女性や高齢者をはじめフリーランスなど個人事業主ら誰もが働きやすい環境を整備し、共生社会にふさわしいユニバーサルデザインの職場環境の形成を促進します。外国人労働者の受け入れも真正面から議論し、制度改善を検討します。
安全・安心の国土造りへ
気候変動の影響による近年の自然災害の激甚化は、まさに国民の命に関わる脅威です。今夏には局所的な豪雨をもたらす線状降水帯が九州や東北などで発生し、甚大な豪雨被害、土砂災害が起きています。「日本はどの国よりも防災・減災を進めるための投資を行い、対策を講じていく必要がある」(大石久和・国土学総合研究所所長)と指摘される通り、国民の命と暮らしを守るためにも、ハード・ソフト両面における事前防災への取り組みは待ったなしです。まずは、2021年度から25年度までの「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を、可能な限り前倒しで実行していかなければなりません。
大規模地震への備えでは公共施設の耐震化はもちろん、劣化が少ないうちに補修する「予防保全」の考え方でインフラ老朽化対策を加速させ、費用を抑制しつつ継続的に投資することが極めて大切です。
一方、防災・減災への取り組みは、「5か年加速化対策」をもって完了するわけではなく、その成果も踏まえて中長期的な視野に立った安全・安心の国土造りの観点から、安定財源の確保などを盛り込んだ法制化を検討すべきと考えます。
地方創生へ自治体の主体的な取り組みを支援
人口減少・少子高齢化が進行している中、地方においても2040年を見据えた活性化策の推進がますます重要度を増しています。
そうした中、政府は新たな地域活性化策として掲げる「デジタル田園都市国家構想」を進める一方、自治体では「まち・ひと・しごと創生法」に基づいて地方版総合戦略を策定し取り組みを進めています。田園都市構想との整合性を確保していくことに留意しなければなりません。地方の主体的な取り組みを支援するためにも、地方交付税など恒常的な一般財源を十分に確保すべきです。
また、コロナ禍で地方へ移住する動きが見られるなど、新しい住まい方や働き方が広がる兆しがある中、こうした動きを国・地方で支え、地域活性化につなげていく視点が重要です。
特に地方においては、公共交通機関をいかに維持するかが重要な問題です。とりわけ高齢者の移動手段の確保は喫緊の課題であり、地域の実情を踏まえたモビリティ社会の構築に向け、デマンド交通や自動運転といった新たな仕組みの導入などの方向性を示す総合計画の策定を国に求めてまいりたい。
年内に女性のためのトータルプラン策定
世界経済フォーラム(WEF)が7月13日に発表した世界男女格差報告書(2022年版)では、日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中116位という結果で、先進7カ国(G7)の中で最下位でした。こうした現状を打開し、女性が自分らしく活躍できる社会を築くため、「選択的夫婦別姓制度」の導入や男女の賃金格差の是正などに注力していく必要があります。
具体的な取り組みとして、真の男女共同参画社会の実現をめざした2020年のわが党の提言を基に、「全ての女性のためのトータルプラン」(仮称)を年内に策定し、具体化に取り組んでまいります。
危機の時代を乗り越える(外交・安保)
ウクライナ危機と日本、公明党の役割
ロシアによるウクライナ侵略は、力による一方的な現状変更の試みであり、国際法違反として非難されるべき暴挙です。また、かつての冷戦時代のような国際社会の分断を招くようなことは、人類全体の利益になりません。今、何より求められているのは、対立から協調へと、時代の歯車を回転させていくことです。
日本はこれまで、国連の中で平和外交を推進することによって、多くの国々と信頼関係を醸成してきました。「平和国家」である日本には、国連体制を強化するための改革を進める要役が期待されています。G7を中心とする西側諸国と結束を強めつつ、東南アジア諸国連合(ASEAN)などの“第三極”の国々も味方に付けながら、国際社会の連帯を深めていくべきです。
また、かつてアフガニスタン復興支援会議を日本が主催したように、ポストウクライナの復興支援でも主導的な役割を担うことが重要と考えます。
積極的な政党外交に取り組んできた公明党も、連立政権の一翼を担い世界の平和と安定に一段と貢献していく決意です。
隙間のない安全保障体制の構築
北朝鮮の度重なるミサイル発射など、わが国を取り巻く安全保障環境は一段と厳しさを増しています。国民の生命と平和な暮らしを守るためには、専守防衛と非核三原則を堅持しつつ、平和安全法制で整備された、平時から有事までの隙間のない安全保障体制の中で、必要な装備や部隊配置などを議論し、防衛力を整備・強化すべきです。
政府は年末までに、今後10年先を見据えた国の基本政策である「国家安全保障戦略」など三つの文書を改定する方針です。公明党は政府や自民党との協議を進め、国民の理解を得られる内容にしていく考えです。また、核兵器の抑止力に代わる安全保障のあり方についても議論を進めます。
日米同盟の強化と対話外交を推進
安全保障環境が激変する中、日米同盟の役割はさらに大きくなっています。平和安全法制に基づく適正な運用を重ね、日米同盟の抑止力・対処力を一層向上させるべきです。
同時に、対話による課題解決の枠組みづくりも欠かせません。米国、中国、ロシアを含めた常設的な多国間の安保対話の仕組みとして、欧州安全保障協力機構(OSCE)のアジア版創設に日本主導で取り組む必要があります。どこまでも対話と抑止を両輪に、現実的な平和主義を進めるべきです。
9月29日に日中国交正常化50年の節目を迎えます。日本と中国は歴史的にも経済・文化の面でもつながりが大きく、両国関係は世界の平和と安定にも大きな影響を与えます。公明党は引き続き、建設的で安定的な日中関係の構築に努めていく決意です。
核廃絶の議論をリード
8月の核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議に、岸田文雄首相が日本の首相として初めて参加し、「核兵器のない世界」に向けたアクション・プランを提唱するなど積極的な姿勢を示したことを評価したい。8月6日には、グテレス国連事務総長が初めて広島の平和記念式典に出席し、核なき世界の実現に向けた取り組みを発信しました。
NPT再検討会議が最終文書を採択できなかったことは極めて残念ですが、核兵器の先制不使用について真剣に討議されるなど、注目すべき動きもありました。
日本は、唯一の戦争被爆国として被爆の実相を世界に発信するとともに、来年のG7広島サミットなどを活用し、核廃絶への機運を高めていくべきです。また、各国の政治指導者らの関与も得て、核なき世界への道筋を議論する11月の「国際賢人会議」では、核抑止に代わる安全保障のあり方についての議論がスタートすることを強く期待します。こうした努力を通して、日本が核兵器禁止条約を批准できる環境を整えていくことも重要です。
日本の役割は重い。核保有国と非保有国の橋渡し役を担い、核軍縮の実質的な進展をめざすべきです。公明党としても積極的に関わりながら、核なき世界の実現をリードしていく決意です。
党勢拡大に向けて
党として綱紀粛正を徹底。全議員が信頼の輪を広げよう
政治は民衆の信頼なくして成り立つものではありません。「民信無くば立たず」です。公明党がめざす「大衆直結の政治」も、国民の信頼が礎であることは言うまでもありません。
しかし近年、公明党の国会議員や秘書による不祥事が起きています。公明党への期待と信頼を裏切るばかりか、政治への信頼を失墜させたことは誠に遺憾であり、決して許されるものではありません。痛切な反省の上に、公明党は綱紀粛正を徹底し、全議員がこれまで以上に深く地域に根差し、地域で信頼の輪を広げながら党勢拡大にまい進していくことを誓い合いたい。
拡大力、発信力を高める
公明党が築いてきたネットワークは党の生命線であり、最大の財産です。そのネットワークの要は議員一人一人です。公明党の持ち味である「小さな声を聴く力」「議員ネットワークの力」を最大限に発揮していくためにも、全議員が「政策力」「拡大力」「発信力」「現場力」――の議員力を徹底的に磨いてまいりたい。
中でも、「拡大力」は党勢拡大の原動力です。そうした観点から、▽訪問対話▽街頭演説▽市民相談を基にした地域の実績作り▽公明新聞の拡大――の日常的な基幹活動を充実・強化していくことに加え、「拡大力」のもう一段アップへ、議員の個人人脈から恒常的・積極的に党を支援してくれる「アクティブサポーター(AS)」を拡大してまいりたい。
一度会っただけでは強力な党理解者になってくれません。だからこそ、議員が常に支持拡大の意識を強く持ち対話を重ねることが重要です。ASづくりを通して、党のネットワークを地域の中へさらに広く、深く浸透させてまいりたい。
SNSの積極活用
最近の国政選挙では、SNS(会員制交流サイト)を積極的に活用した政党が、無党派など幅広い層に支持を拡大する傾向が顕著になっています。こうした時代の変化を鋭敏につかみ、党ホームページをはじめ、さまざまなコンテンツを一層充実させ、各種選挙でも最大限に活用していきます。
他方、議員自身の発信力も問われます。実績のアピールや活動報告にとどまらず、より具体性のある地域の話題や情報を日頃から小まめに発信していくことが大切です。発信内容に知恵と工夫を凝らし「発信力」を一層強化していきたい。
女性、青年運動
女性、青年運動は、党理解を広げる闘いの両翼を担ってきました。コロナ禍にあっても、女性委員会は「ウイメンズトーク」、青年委員会は「ユーストークミーティング」を開催し、現場の窮状や要望を聴き取り、数々の政策を実現してきました。女性の力、青年の力は、活力あふれる日本を築く上でも不可欠です。党所属議員の約3割を占める女性議員、各地で躍動する青年議員を先頭に、今後も女性、青年運動を力強く展開していきたい。
青年委員会が実施してきた若者向け政策アンケート運動「VOICE ACTION(ボイス・アクション=VA)」は、次代を担う若者の問題意識を前面に押し出した突破力のある取り組みです。「あなたと未来を拓くビジョン2030」を掲げた今年のVA2022には計23万を超える賛同の声が寄せられました。これを基に作成した青年政策の提言を岸田首相に直接申し入れたことにも反響が広がりました。
VAは、「政治に声が届いた」と若者に実感してもらう貴重な機会となります。今後も強力に推進してまいります。
公明新聞の購読推進
公明新聞は今年4月2日、創刊60年を迎えました。来年には通算2万号に到達する予定です。公明新聞を支え育ててくださっている愛読者の皆さま、印刷、輸送、配達、そして購読拡大に尽力してくださる全ての方々に、心より感謝と御礼を申し上げます。
公明新聞には、党の政策や活動を隅々まで届けるネットワークの“血液”としての役割があります。立党精神が脈打つ党の姿をリアルタイムで報道し、さらに与党唯一の日刊紙として、政府・与党の今の動きや考えを速報しています。
公明党の真実の姿を正確に発信し、党勢拡大をさらに強力に推進するため、電子版を含め、公明新聞の拡大に一層、力を入れていきたい。まずは11月、12月を「創刊60年記念 機関紙拡大運動 集中期間」として、議員率先で購読拡大に取り組み、自身が掲げた目標を断じて完遂していこうではありませんか。
統一選を勝利し結党60年へ
庶民と地域を照らす太陽に
来年は春に最大の政治決戦である統一地方選挙を迎え、その後も、夏から秋にかけて岩手、宮城、福島の東北3県で地方選が続きます。いずれも厳しい戦いが予想されますが、揺るぎない党の基盤構築へ断固勝ち抜いてまいりたい。
統一地方選は、前半戦の41道府県・17政令市議選で、公明党の道府県・政令市議会議員の8割以上が改選を迎えます。後半戦においても公明党の東京特別区・一般市・町村議会議員の約半数が改選されます。統一地方選は、わが地域、わが自治体が直面する課題を解決に導く政党、議員が問われる選挙です。断じて勝利し、地域に希望を広げてまいりたい。今年12月の茨城県議選をはじめ、来春までに相次ぐ統一外地方選挙の勝利で弾みを付け、上げ潮の中で全員当選を果たしましょう。
立党精神が示されてから60年。今再び“第2の草創”として、新たな党の前進の歴史を刻んでまいりたい。さあ、全議員が生まれ変わった決意で総立ちし、2024年11月17日の結党60年へ連続勝利の前進を開始していこうではありませんか。