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乳がんから女性の命 守ろう
10月はピンクリボン月間
10月は「ピンクリボン月間」。乳がんの正しい知識を広め、検診を受けるよう促す取り組みが集中的に行われる。乳がんの現状について解説するとともに、公明党がん対策推進本部の塩田博昭副本部長(参院議員)のコメントを紹介する。
自己触診で左胸にしこり
「なぜ私が、がんに……」。都内に住む山田美佳さん(仮名、39歳)は4月末、セルフチェックで左胸にしこりがあるのに気付いた。「まさか」と思い、検査を受けたところ、大きさ3.4センチの悪性腫瘍だった。山田さんは、祖母に乳がん歴があったことから、医師から「年に1回の検診を」と言われていたが、新型コロナウイルスの感染が広がった2020年以降、行けなかったという。
「もっと早く見つかれば…」
コロナ禍での“検診控え”に後悔
幸い、他の臓器への転移はなく、がんの進行度は「ステージⅡ」。抗がん剤治療を経て、来月に乳房の全摘出手術を予定している。山田さんは「もっと早く検診を受けて、がんが見つかっていれば……。でも、あの時に何も気付かず、進行していたらと思うとゾッとする」と語り、早期検診の大切さを訴える。
9人に1人が生涯でかかる
最新統計によると、日本人女性が生涯のうちに乳がんに罹患する可能性は9人に1人。乳がんの罹患率は30代半ばから上昇し、60代後半でピークを迎えるが、70~80代でも高い【グラフ参照】。
18年に乳がんと診断された女性は9万3858人で、女性のがんの中で最多。亡くなった女性は1万4650人(20年)に上る。
毎年新たに乳がんになる人は、この15年間で倍増。死亡数も増え続けており、20年には30~60代女性で、病死の原因の第1位となっている。
増加の背景について、「食生活やライフスタイルの欧米化がある」と指摘するのは、がん研有明病院乳腺センター長の大野真司医師だ。「乳がんには女性ホルモンが深く関わっている。日本人女性の初潮が早まり、閉経は遅くなった。初産年齢が遅くなり、産む子どもの数も減った。乳がんのリスクとなる肥満も増えている。欧米並みの7~8人に1人の水準まで乳がんは増えるだろう」と語る。
家族に罹患歴「遺伝性」の疑い
若くても専門医に相談を
女性の乳がんの5年相対生存率は92.5%で他のがんよりも高いが、進行すると大きく下がる【表参照】。乳がん検診による早期発見・治療の重要性が強調されるのは、このためだ。早期であれば、部分的な切除で済み、乳房を温存できる可能性も高まる。
日本の乳がんの検診受診率はわずか2割程度だったが、公明党の主張で09年度から、検診無料クーポンの配布など対策を大きく進めた結果、19年には受診率が47.4%まで上昇した。ただ、欧米の7~8割と比べると、まだ低い。
乳がんの5~10%は遺伝性とされる。大野医師は「遺伝性乳がんは、若くして発症しやすい。家系内に乳がんや卵巣がんなどの罹患歴がある場合は、専門医に相談してほしい」と話す。
乳がんは、治療終了後10年以上たってからの再発もある。認定NPO法人「乳がん患者友の会きらら」の中川圭理事長は20年以上にわたる自身の乳がんとの闘病を踏まえ、「乳がんは、手術したら“おしまい”という単純なものではない。再発率が高く、治療薬が限られる難治性のタイプもある。誰もが当事者・家族になり得る。男性も含めて、乳がんを正しく知ってほしい」と強調する。
患者支える体制 築く
党がん対策推進本部 塩田博昭 副本部長
公明党はこれまで、2006年の「がん対策基本法」制定をリードするなど、がん撲滅をめざして対策を進めてきた。
「女性特有のがん検診」の無料クーポン配布や「個別の受診勧奨・再勧奨(コール・リコール)」のほか、「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」の患者が受ける予防的切除と乳房再建への保険適用や、がん再発などで休んでも給付を受けやすくする「傷病手当金」の通算化も実現に導いた。
がんは“不治の病”ではなくなり、長く付き合いながら、本来の寿命近くまで生きられるケースもある。今後は早期発見とともに、患者が尊厳を持って安心して暮らせる体制の構築へ、全力を挙げる決意だ。