ニュース
個別避難計画の推進を
大雨など緊急時の逃げ遅れゼロへ
党女性委オンライン勉強会から
大雨による浸水や土砂災害などから住民の命と安全を守るため、自力での避難が難しい高齢者や障がい者らを対象に「個別避難計画」を作成する自治体が増えています。公明党女性委員会(委員長=古屋範子副代表)がこのほど開いたオンライン勉強会では、個別避難計画の作成について、内閣府の説明を受けるとともに、先進的に取り組む茨城県常総市と宮崎県延岡市から状況を聞きました。その模様を紹介します。
■庁内外の連携や訓練実施など
■実効性の確保が重要に
公明党の推進により、2021年5月に施行された「改正災害対策基本法」では、個別避難計画の作成が自治体の努力義務となりました。内閣府によると、「作成済み」「一部作成済み」の市区町村は、全体の約7割に上るそうです。
その上で、実効性のある個別避難計画の作成に向け、「庁内の連携」「庁外との連携」「福祉専門職の参画」「個別避難計画を活用した訓練」のうち、少なくとも一つに取り組む自治体は、検討中も含め、8割超に達しています。
古屋委員長(左端)、佐々木さやか副委員長(右隣)が出席して開かれた党女性委のオンライン勉強会
勉強会では、内閣府の担当者が、近年の大規模災害による犠牲者の6割以上を高齢者や障がい者ら災害弱者が占めている実態を紹介し、「避難の実効性を確保することが課題になっている」と指摘。国の補助金なども活用し、各自治体による個別避難計画のさらなる作成推進を呼び掛けました。
また担当者は、計画作成のノウハウや難病患者に関する情報を共有する仕組みづくりについて、都道府県による支援の必要性を指摘。自主防災組織や社会福祉協議会など、防災や福祉の既存の体制を有効活用することも重要だと述べました。
参加議員からは「要支援者のデリケートな情報を扱うため、プライバシーをどう確保するかが課題だ」などの意見が出ました。
古屋委員長は「(女性議員同士が)知恵を出し合いながら、国と地方のネットワークを生かし、計画作成が進むよう努力していきたい」と訴えました。
■茨城・常総市
過去の教訓生かし水害リスクも考慮
茨城県常総市の担当者は、15年9月の関東・東北豪雨により、深刻な浸水被害を受けた教訓を生かし、「逃げ遅れゼロ」に向けて個別避難計画の作成を進めていると説明しました。
担当者は、昨年1月末現在で、要支援者9501人の名簿を作成し、情報提供同意者が1532人、計画作成希望者が1289人に上ることを報告。居住地の水害リスクなども考慮した計画の作成や、避難行動計画を時系列で決めておく「マイ・タイムライン」の推進などの取り組みを紹介しました。
さらに同市は今年度、要支援者に福祉避難所をより利用してもらうための体制構築にも力を入れています。担当者は、福祉避難所の開設・運営マニュアル作成や重要資材の整備などを進めていると強調しました。
■宮崎・延岡市
福祉専門職が参画、状況に応じた支援
宮崎県延岡市の担当者は、「災害から逃げ遅れゼロをめざし、住民主体の防災・減災対策に取り組んでいる」と説明。個別避難計画の作成では、福祉専門職などが参画し、高齢者や障がい者らの状況に応じた支援を進めていると述べました。
具体的には、同市の要支援者3859人を、①自力で避難が可能②声を掛けたり介添えがあれば避難できる③専門職などの協力を要する――の3グループに分けた上で、個別避難計画の作成について、「自分や家族で作る」「地域住民と一緒に作る」「専門職と作る」といった複数のケースを想定していると説明しました。
個別避難計画
高齢者や障がい者のような自ら避難することが難しい「避難行動要支援者」ごとに避難の流れなどを記載した計画。名前や住所といった基本情報のほか、①想定される災害状況②避難時の配慮事項③避難先――などが明示される。