ニュース
【主張】園児バス置き去り死 許されぬ事件、再発防止策急げ
あまりに痛ましく、許されぬ事件である。
静岡県牧之原市の認定こども園で、登園時に送迎バスの車内に3歳の女の子が取り残され、熱中症で亡くなった。車内に約5時間置き去りにされていた。
発見時は上着を身に着けておらず、水筒も空だった。車内で暑さをしのぐために水分を補給したとみられる。バスに一人残され、どんなに心細く苦しかったか。胸が締め付けられる。ずさんな管理体制が明らかになっている園の責任は極めて重い。
同様の事件は昨年7月にも福岡県内の保育園で起き、政府が安全管理を徹底するよう全国の自治体に通知していたが、再び幼い命が失われてしまった。こうした悲劇を繰り返さぬよう対策を強化すべきだ。
事件を受けて政府は8日、関係府省による会議を開き、実態調査などを行って再発防止に向けた課題を洗い出すことを決めた。また、マニュアルの策定や登園管理システムの普及など緊急対策を10月中に取りまとめる方針も示している。
大切なのは、公明党の石井啓一幹事長が9日の会見で指摘したように、ハードとソフトの両面から対策を見直すことだ。
ハード面では、人為的なミスをカバーするシステムの活用を進めたい。代表的なのは、車内に取り残された人を感知する人感センサーだ。また、スクールバス用の警報ブザーもある。エンジンを切った後に、運転手が車内最後部にあるブザーのスイッチを切らないと大音量が鳴り響く。降車していない子どもの見落としを防ぐ装置の一つだ。
ソフト面では、福岡県が昨年の事故を受けて独自に指針を作り、置き去り防止などのルールが職員に周知徹底されているか定期監査でチェックしている。
このほか、保育現場の慢性的な人手不足にも目を向ける必要がある。政府は職員の処遇改善などをしっかり進めてもらいたい。
今回の事件を重く受け止め、保護者が安心して子どもを預けられる環境づくりを急ぐべきである。