ニュース
コラム「北斗七星」
ロシア政府が日本人と北方領土住民の「ビザなし交流」を一方的に破棄した。1992年に始まった同事業の提案者で、先頃亡くなったミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領が聞けば落胆したに違いない◆85年にソ連共産党書記長に就いたゴルバチョフ氏は、ペレストロイカ(立て直し)の改革とグラスノスチ(情報公開)を断行。西側との平和共存をめざす「新思考外交」を展開した。87年に米国と中距離核戦力(INF)全廃条約を結び、89年には米ソ首脳会談で冷戦終結を宣言。90年にノーベル平和賞を受賞した◆ただ、ロシア国内での評価は高くない。ソ連崩壊で超大国の地位を失ったことや経済的疲弊が続いたからだ。社会の混乱がプーチン氏の強権的な長期支配を許したとの見方もある◆しかし、冷戦を終結に導き、核軍縮を進めた功績は色あせるものではない。91年の初来日の際、核大国の首脳として初めて長崎を訪問し、原爆犠牲者に追悼の祈りをささげたことは、氏の強い願いを表していよう。広島には3度訪れている◆冷戦終結時に氏は語った。「対立、軍拡、精神的不信感は過去のものにしたい」。この思いを世界の政治指導者は思考の中心に据えてほしい。(光)