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【主張】ザポロジエ原発 IAEAの専門家常駐は重要
ロシア軍はウクライナ南東部のザポロジエ原子力発電所を占拠している。同原発周辺では現在、砲撃が相次いでおり、原発の敷地内にも砲弾が着弾している。
欧州最大級ともいわれるザポロジエ原発の施設が損壊すれば、放射能汚染が欧州の広範囲に及ぶ大惨事を招きかねない。それ故、同原発の安全確保を急ぐべきだ。国際原子力機関(IAEA)の調査団は1日、同原発の施設内を初めて視察し、3日に声明を出した。
声明によると、ザポロジエ原発には外部と電力をやりとりするための高圧送電線が4本あるが、その全てが損傷し、電力の供給が遮断されているという。幸い、近くの火力発電所と同原発をつなぐ予備の送電線を使い、原発に電力を供給している。
もし、ザポロジエ原発への電力供給が完全に途絶えていたら、原子炉を冷却できず炉心溶融(メルトダウン)が起こり、放射性物質が漏れ出ていたかもしれない。そのような事態になるのを防ぐため、IAEAが、ザポロジエ原発の安全な稼働に向け、「常時の支援と監視」を行う専門家を常駐させる方針を示したことは重要だ。
ロシア軍はザポロジエ原発を占拠する半面、同原発の運用を担っていたウクライナの原子力企業であるエネルゴアトム社の職員を働かせている。同社によると、職員が脅迫されるなどしているというが、そのようなことは断じて許されない。ロシアは、常駐するIAEAの専門家とエネルゴアトム社の職員の安全確保に努めるべきである。
ザポロジエ原発を戦場にした責任はロシアにある。戦時に適用される国際人道法は原発への攻撃を禁じているが、原発に部隊を駐留するなどした場合、攻撃の禁止対象から除外される。従って、仮にウクライナ軍が原発を奪還すべく攻撃したとしても、それは、原発の敷地内に兵士や軍用車両を配置するロシア軍が招いた事態だ。ロシア軍が原発から直ちに撤退することが最善の解決策であるということを改めて強調したい。