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【主張】経済安全保障 国民守る重要技術の開発強化を
今月から一部施行された経済安全保障推進法に関し、国がこれから研究開発を支援する特定重要技術について、政府は「重要技術育成プログラム研究開発ビジョン(第1次)」の骨子案をこのほど公表した。
AI(人工知能)やバイオ(生命科学)などの先端分野で優位性を確保することは、経済成長だけでなく、国民の生命・財産を守る基盤ともなる。安全保障の観点から効率的な支援となることを期待したい。
国の安全に関わる電力や通信、交通、医療などの重要インフラ(社会基盤)は先端技術で支えられているが、一国でその全てを独自開発することは困難だ。外国企業からの技術移転や国際共同開発は避けられないのが現実である。
ところが現在は、経済政策も安全保障と無関係ではない。経済面から国益の確保をめざす経済安全保障の考え方がすでに広がっているからだ。国際情勢の変化によって先端技術の移転やハイテク製品の輸入が阻止される時代である。そのため先進国は先端技術を独自に獲得しようと研究開発にしのぎを削っている。
骨子案は、「先端的な重要技術」としてAI技術、量子技術、ロボット工学、先端センサー技術、先端エネルギー技術を挙げ、それらが活用される「場」には①海洋②宇宙・航空③領域横断・サイバー空間④バイオ――の領域を示した。
支援対象になる個別の技術は、海洋調査のための自律型無人探査機、災害や緊急時に活用できる長時間飛行が可能な小型無人機、AIセキュリティーの技術などである。
こうした技術を効果的に支援するため骨子案は、市場経済の視点だけに委ねていては投資が不十分になりがちな先端技術を育成すること、さらに、研究開発の支援は現実社会に応用される社会実装の一歩手前まで行うことを明記した。
骨子案を議論した政府の有識者会議では「これから生まれてくる先端技術に先回りして投資する視点」の必要性も指摘された。さらに検討を進めてほしい。