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コラム「北斗七星」
モーツァルトのオペラ「魔笛」の一幕。主人公の王子タミーノのお供、パパゲーノが失恋で絶望し、自ら命を絶とうとした。その時、3人の童子が現れて歌う。「やめろよパパゲーノ、よく考えるんだ。人生は一度だけ、二度とはないよ」。この声にパパゲーノは生きる道を選ぶ◆パパゲーノのように、自殺を踏みとどまった経験を報道することによって「死にたい」という気持ちを抑制する可能性があるという。これは“パパゲーノ効果”と呼ばれている◆一方、有名人の自殺報道で自殺が誘発されたケースが多発している。“ウェルテル効果”というものだ。18世紀に『若きウェルテルの悩み』(ゲーテ)が出版されると、影響を受けた青少年が主人公をまねて自殺する現象が相次いだことに由来する◆子どもや若者の自殺は、長期休暇明けに増加する傾向がある。これを踏まえて、厚生労働省は今月10日から、子ども・若者の自殺防止に向けた集中的な啓発活動を実施している◆夏休みも終盤となった。新学期を前にして、不安や緊張が高まっている児童生徒も少なくないだろう。普段と違う様子はないか。周囲の大人が、子どもの「心のSOS」を受け止め、声に耳を傾けたい。(川)