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コラム「北斗七星」
甲子園球場で高校球児の活躍が熱い。その野球を米国から日本に伝えたのは、ホーレス・ウィルソン。150年前、外国人教師として第一大学区第一番中学(後の東京大学)で英語や数学を教える傍ら生徒に野球を伝授した◆ノンフィクション作家・佐山和夫氏の著書『明治五年のプレーボール』によると、ウィルソン自身は、「南北戦争」の兵役中に野球を覚えたようだ。兵士らは戦闘の合間に野球を楽しんでいたのだ◆ある前線ではこんなことも。両軍が塹壕で長く対峙する中、北軍兵が面白半分に野球のボールを敵陣に投げ込む。「弾」ならぬ「球」を受けた南軍兵がそれを相手に投げ返し、また北軍もその球を南軍に放る。そんな“キャッチボール”がしばらく続いたという◆太平洋戦争中に開催された、公式記録にはない「幻の甲子園」。80年前の夏、国が主催し戦意高揚へ選手を「選士」と呼ばせた大会だが、16校が甲子園に集い満員の観衆を沸かせた◆戦時中でも、野球を楽しむ心に平和へのささやかな希望が見える。甲子園で白球を追った球児が今、何人も本場・米大リーグで人気を博す。野球に限らず多くのアスリートが国境を越えて心を結ぶ。その“平和の戦士”にエールを送りたい。(三)