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【主張】ローカル鉄道の存廃 “地域の足”確保に知恵絞りたい
ローカル鉄道が存続の危機に直面する中、地域の足をどう確保するか。この課題の解決に向けた新たな提案に注目したい。
経営状況が厳しいローカル鉄道のあり方を話し合ってきた国土交通省の有識者検討会は7月25日、提言をまとめた。
ポイントは、利用者が少ない区間を対象にした「特定線区再構築協議会」(仮称)の創設である。鉄道事業者や沿線自治体の要請に基づいて国が設置し、バスへの転換を含めた運行見直しについて協議する。
対象となる目安は当面、1キロメートル当たりの1日平均利用者数(輸送密度)が1000人未満とした。ただ、通勤・通学の利便性も考慮し、ピークとなる1時間に隣接する駅との間の乗客が500人を上回る場合は除外する考えも示した。
今回の提言の背景には、ローカル鉄道の厳しい現状がある。
国交省の調査によると、鉄道からバスに代える目安である輸送密度4000人未満の路線は、2020年度にJR6社全体の約6割に上っている。地方の私鉄でも利用者の減少が進む。
主な要因は人口減少とマイカー利用の増加で、コロナ禍による外出自粛や在宅勤務による利用者減が追い打ちをかける。
従来は都市部の路線の利益でローカル線の赤字を補ってきたが、その手法も限界を迎えている。今回提案された、鉄道事業者と自治体の協議を国が関与して進めることは意義がある。
協議会では、路線の存続か、廃止してバスに転換するかを含めて話し合う。自治体が線路などの施設を保有して事業者が運行する「上下分離方式」の活用や、線路を専用道にしたバス高速輸送システム(BRT)などが選択肢とされる。
ローカル鉄道の問題について公明党は先の参院選で、鉄道事業者と沿線地域が相互に協力・協働し、地域住民の移動手段を再構築していくための環境整備を掲げた。今回提言された協議会のように、課題解決へ関係者が知恵を絞る取り組みを後押ししたい。