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知床事故 進む安全論議
小型旅客船の行政処分を強化
国交省の検討委員会が中間取りまとめ
北海道・知床半島沖で26人が乗った観光船「KAZU I」が4月23日に沈没してから3カ月。14人の死亡が確認され、12人は行方不明のままだ。この事故を受け、国土交通省が設けた検討委員会(委員長=山内弘隆・一橋大学名誉教授)は7月14日、小型旅客船の安全対策を強化するための「中間取りまとめ」を公表した。その概要を解説する。
使用停止命令を新設へ
事業者の評価・認定制も
「わが国では近年類をみない重大事故」「今回の事故の発生を防止できなかったことを関係者は重く受け止め、被害者の方々の犠牲を決して無駄にすることがないよう、小型旅客船の安全対策を徹底的に講じていかなければならない」
これは国交省の検討委員会が示した中間取りまとめの一節である。厳しい認識であり、必要な対策として6分野・47項目を掲げた。国交省は今後、関連する法令の改正や新たな制度設計を進める。
運航会社「知床遊覧船」は昨年、2度の事故で特別監査や行政指導を受けながら、再び法令違反を繰り返していた。中間取りまとめは「輸送の安全確保の仕組みが破綻していた」と指摘。国側は監査や船舶検査で問題を見抜けず「改善の余地がある」とした。
これを踏まえ、今後の対策では、抜き打ち監査を導入し出航判断の実態を調査。リモート形式を活用し監査頻度も増やすほか、通報窓口も設置する。中間取りまとめでは、「速やかに講ずべき事項」とされ、国交省は、今月末までに実施する方針だ。
基準があいまいだった行政処分については、許可取り消しと事業停止の前段階として、船舶の使用停止命令を新設。違反点数の累計で自動的に処分を決める。海上運送法に基づく安全確保命令に従わない場合、現行では100万円以下の罰金を引き上げるほか、拘禁刑も導入する。
低水温の海域を航行する事業者には、海水に漬からずに避難できるスライダー付き救命いかだの搭載を義務化。確実に救助要請できるよう、航路の大半が電波圏外の携帯電話は通信設備として認めず、業務用無線か衛星電話の配備を促す。
小型旅客船は現在、いったん許可を得れば事業を継続できるが、原則5年の更新制とする。利用者の判断材料にしてもらうため事業者の安全性を評価、認定する制度も創設。併せて行政処分や指導を受けた業者に関する国の情報公開も拡充する。
検討委員会は年内にも最終取りまとめを行う。次回以降は航海中の映像や音声を記録できる装置の導入などを議論する。
検討委員会の山内委員長は「今後の事故調査から情報を得て、あるべき対策の姿を探っていくのが非常に重要」と述べた。
緊急点検で多くの不備確認
国交省は7月15日、今回の事故を受け、全国の旅客船事業者を対象に行った緊急安全点検の結果も公表した。790事業者のうち、162事業者で運航不備が見つかった。
同省によると、既に口頭で行政指導し、143事業者の是正を確認した。残り19事業者は運航を中止しているため、再開され次第、是正確認する。
不備があったのは、運航時に運航管理者や代行者が不在だった2事業者や、出航中止の判断を記載していないといった運航記録簿の記載不備が見つかった52事業者など。
また、携帯電話を通信手段としている小型旅客船のうち、29事業者の33隻で、運航ルートの一部が通信エリア外だった。携帯電話会社や運航ルートを変更するなどして、常時通信可能になったという。
可能な対策から速やかに実行
斉藤鉄夫・国土交通相(公明党)
事故から3カ月が経過しましたが、国土交通省として全力で捜索活動を継続しているとともに、原因究明にも全力を挙げています。
今回の事故を受け、二度とこのような痛ましい事故を起こさないよう、有識者による検討委員会を立ち上げました。5月11日の第1回検討委員会の開催から約2カ月間、委員に大変精力的に議論していただき、7月14日の第6回検討委員会において、総合的な安全対策の中間取りまとめをしていただきました。
国交省としては、この中間取りまとめに掲げられた各種対策について、可能なものから速やかに実行に移すなど、小型旅客船の安全対策に万全を期し、利用者の皆さまに安心して乗船いただけるよう、全力で対応していく決意です。
引き続き、年内の最終取りまとめに向けて、精力的に検討を進めていきます。今回の事故の発生を真摯に受け止め、このような痛ましい事故を決して繰り返さないとの強い決意の下、中間取りまとめを踏まえ、小型旅客船の安全対策に万全を期してまいります。









