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施設・里親などを巣立つ子ども ケアリーバーを支えよう
“18歳で自立”高いハードル
周囲に頼れる人なく学業断念も
児童養護施設や里親など社会的養護の下で育ち、保護(ケア)から離れた子どもは「ケアリーバー」と呼ばれる。高校卒業などを機に社会へ巣立っていくが、自立は容易ではない。公明党の推進により、先の通常国会で成立した改正児童福祉法では、ケアリーバーへの支援が拡充される。現状をまとめ、全国児童家庭支援センター協議会の橋本達昌会長に課題を聞いた。
■“赤字”生活5人に1人
虐待や貧困などを理由に親元を離れ、児童養護施設などで暮らす子どもは、従来、制度上では原則18歳(最長22歳)で施設や里親を離れなければならない。しかし、“18歳で自立”は極めてハードルが高く、退所後、孤立して生活苦に陥るケースなどが相次ぎ、長年、見直しを求める声が上がっていた。
厚生労働省が昨年4月に公表した初のケアリーバー全国実態調査では、その窮状が浮き彫りに。暮らしで困っていることとして「生活費や学費」の33.6%が最多を占めた。
さらに、5人に1人が収入より支出が多い“赤字”生活であることが明らかに。経済的な理由で進学を断念したり中退したりするケースも多いという。
■相談できずに孤立しやすく
同調査によると、過半数が民間賃貸住宅などに1人で暮らす。だが、家族など頼れる大人が周囲にいないことが多く、孤立しやすい。当事者からは「親や親戚などの後ろ盾がなく、倒れて収入がなくなったら生きていけなくなる」「過去のトラウマの克服の仕方が分からないまま急に一人になって不安だ」といった声が寄せられたという。
なお、児童養護施設の関係者によると、出身施設の職員などが相談相手になる場合もあるが、施設に遠慮して連絡できない子や、自ら接触を拒絶する子もいる。
親元に戻る場合もあるが、実家では、精神疾患などの病気を抱える親の世話に追われて自身まで病んでしまう事例や、親の借金など“負の遺産”を背負うケースもある。
■援助の年齢制限を撤廃/公明推進で法改正
こうした実態を踏まえ成立した改正児童福祉法は、2024年4月に施行される予定だ。ケアリーバーの自立支援を行う児童自立生活援助事業について、原則18歳の年齢制限や、教育機関への在籍といった援助の要件が緩和され、都道府県が必要と判断する時点まで支援を継続できるようになる。
加えて、退所後のサポート強化のため、相談や交流ができる拠点を整備する事業も都道府県が行わなければいけない業務として盛り込まれた。
公明党はこれまで、当事者や支援者らの声を基にケアリーバー支援を強力に推進。国会質問や提言を通じて、18歳の年齢制限の撤廃や孤立防止を訴えてきた。
党児童虐待防止・社会的養護推進プロジェクトチームの山本香苗座長(参院議員)は「ケアリーバー当事者の参画を推進し、当事者が安心して支援を受けられる環境を整備していきたい」と語った。
全国児童家庭支援センター協議会 橋本達昌会長
所在不明になる子多い/戻る場所や訪問支援が必要
ケアリーバーを取り巻く環境は非常に厳しい。例えば、0歳から18年間、施設で愛情を注いだ子が晴れて社会に出た後、数年で失職し、行方が不明になる事例もあり、心を痛めている。国の調査では、施設や里親が所在を把握できていないケアリーバーが約7割に上るという事実が発覚した。
これまで、国としてケアリーバーを支える十分な制度はなかった。今回の法改正で、自立支援の年齢制限が撤廃された点などは大きな前進であると評価したい。
今後の課題もある。一つ目は、一度社会に出た子どもが一定の年齢までは施設に戻れる仕組みの構築だ。今回の年齢制限の撤廃は延長が可能になっただけで、一度退所するともう施設には戻れない。挫折しても戻れる場所を作るべきだ。
二つ目は、ケアリーバーの拠点事業について、今回の法改正では都道府県の業務と位置付けられたが、今後、自治体間で支援に差が生じないようにしてもらいたい。
三つ目は、アウトリーチ(訪問支援)の拡充だ。自ら相談に行くことができない子もいる。子どもの居宅を訪ねて支援できる「在宅指導措置」の年齢制限は法改正後も18歳だ。緩和へ向けた議論を進めてもらいたい。
全てのケアリーバーが必要な支援を受けられるよう、公明党のさらなる尽力に期待している。