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どうする 若者の低投票率
イデオロギーや理想より現実主義的な傾向が強い
政策実現の成功体験あれば選挙へのコミットも高まる
日本若者協議会 室橋祐貴代表理事に聞く
若い世代の低投票率が指摘される中、主権者教育や若者団体による政策提言など政治参加を促す取り組みが積極的に進められている。今回の参院選結果から見えた若者と政治を取り巻く現状と課題ついて、若者の声を政策に反映させる活動に取り組む「日本若者協議会」の室橋祐貴・代表理事に聞いた。
日本若者協議会 室橋祐貴 代表理事
――今回の参院選における若者世代の投票率の受け止めは。
室橋祐貴・代表理事 全体の投票率が52.05%で、前回2019年の参院選(48.80%)からは、3.25ポイント上昇した。この中、10代の投票率は、34.49%と、前回参院選(32.28%)から2.21ポイント上昇したものの、全体の投票率からは17.56ポイントも下回り、18歳選挙権が実現した16年以降で、最も差が大きくなった。
近年、若い世代で政治や社会課題に対する関心が高まっていることから、全体よりも上昇率が少し高くなるのではと思っていたため、正直意外な結果だ。
今回の大きな争点となった「物価高」に対して、上の世代に比べ、その影響を肌感覚として持ちにくかったことも大きいのではないかと思われる。
――投票行動はどうか。
室橋 投票行動については、政治テーマの関心が上の世代と比べて変わっている。上の世代では経済、金融、憲法改正、安全保障などの国家全体に関わる政策が議論される。テレビなどの党首討論もこうした話題に集中する。
しかし、日本に余裕のあった20世紀後半ならイデオロギーや理想を明確にした方が若者に人気が出たかもしれないが、近年の日本は、多くの課題が表面化しており、若い世代は特に身近な課題を感じている。
具体的には、学費の負担(奨学金の返済)や長時間労働の割に給料の上がらない(生産性の低い)労働環境、子育て環境の大変さ、いじめや自殺などだ。
とにかく、目の前の課題を解決してほしいと、切迫感を抱えている。こうした状況から、現実主義的な傾向が強く、一つでも課題を解決してくれる政党を求めている。
こうした中、今回の参院選では批判や対決だけの政党よりも、改革志向が強い政党に多くの支持が集まった。
若者の最も支持する政党が自民党であることから、よく「若者は保守化している」と言われるが、実際は現実主義かつ改革志向だ。
若者にとって改革政党は自民党であり、改革色の弱まった岸田政権になってから、自民党への若者の支持率が下がったことも、それを裏付けている。
――日本では人口も多く、投票率も若者世代に比べれば高い高齢世代向けの政策にばかり注力されるとの指摘もある。
室橋 そもそも世代別の人口が違いすぎて若者の声が政治に届きにくい。ある調査では、日本の18歳は「自分の行動で、国や社会を変えられると思う」が26.9%で、諸外国の半分以下だ。
そうした中、選挙以外での政治参加である、政策提言という活動が広がり、給付型奨学金の拡充や「生理の貧困」対策など、具体的な成功事例も出てきた。こうした流れはこれまでなく、この5年以内くらいで大きく広がっている。
投票に行っていない若者の声を聞くと、自分たちが投票しても意味が無いと諦めている人が非常に多い。実際に投票に行った人でも、現実は変わらないという感想も耳にする。
逆に言えば政策提言で成功体験を実感した若者は、投票だけでなく陣営のボランティアに入ったり、知人に投票依頼をしたり、より選挙へのコミット度合いが増している。
――会員制交流サイト(SNS)による影響はどうか。
室橋 10代から大学生ぐらいまでで言えば、最近は、ユーチューブや、TikTok、インスタグラムを見る人が多く、ツイッターは徐々に使われなくなっている。共通するのは1分や30秒のイメージや動画で、文字ではない。ぱっとした印象を重視している。
逆に言うとデマや陰謀論を信じる人も増える可能性があるため、主権者教育によってメディアリテラシー(情報を読み解く力)を高めないと危険だ。
■公明党の実現力を訴える工夫が必要
――公明党の若者政策の課題は。
室橋 若者の声を政治に届ける活動をしている中で、一番頼りにしているのが公明党だ。若者政策の実現力も群を抜いている。それだけに、公明党はその実現力のアピールの仕方にもっと知恵と工夫と力を注いでほしい。
公明党が掲げる「小さな声を聴く力」こそ若者政策のキーワードだ。引き続き若者の声を予算に反映し、若者政策を担う「若者担当大臣」の設置など、一つでも多く公約に掲げた政策を実現してくれることを期待している。
むろはし・ゆうき
1988年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒、同大政策・メディア研究科中退。