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【主張】ビル火災対策 避難路確保など改修促す手だてを
大阪市北区の雑居ビルに入るクリニックで26人が死亡した昨年12月の放火殺人事件を受け、政府は今後の対策をまとめた有識者検討会の報告書を公表した。
2019年7月の京都アニメーション放火殺人事件でも36人が亡くなった。凶行を防ぐのは容易ではないが、火災による被害の拡大を抑える手だてはあるはずである。考え得る方策を着実に実行に移していくことが求められている。
報告書の焦点は、「既存不適格」と呼ばれる建物への対応だ。
建築基準法の施行令は、6階建て以上の建物には二つの避難ルートを確保するため、地上につながる階段を二つ以上設置することを義務付けている。
しかし、1974年に施行されたため、それ以前に建つビルは対象外となる。大阪の雑居ビルは8階建てで階段は1カ所のみだったが70年に建設されており、規定が適用されない既存不適格の建物だった。
現行では、既存不適格の建物を改修する際は原則、耐震性など全ての基準を満たす必要がある。このため、大規模な改修による費用負担の大きさなどから、所有者がためらって実施できないケースがある。
報告書では、こうした建物について、防火や避難路確保を目的とする場合、改修する際の基準を特例で緩和するよう求めた。階段の増設や避難に有効な屋外バルコニーの設置など、一部改修でも実施できるようにし、ビルの安全性を高める狙いだ。
また報告書では、補完的な代替措置として、消防隊が到着するまでの間、一時的に安全が保たれるよう、防火用に区画された退避スペースを作ることを推奨。所有者の改修負担を軽減できる支援措置の実施が必要だとも指摘している。
階段が一つだけの雑居ビルは、全国に数万棟あるとされる。政府は財政支援の検討を進めるとともに、有効な改修方法や避難行動に関するガイドラインを策定するなど、防火・避難対策を促す環境づくりに努めてほしい。









