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【主張】爆発性兵器の規制 初の政治宣言に各国は署名を
弾頭部に爆薬を含むミサイルやロケット弾などの爆発性兵器は、広範囲に被害をもたらす威力を持ち、戦争になると当たり前のように使用されている。その規制に向けた国際的な取り組みが本格化していることに注目したい。
先月、アイルランドが主導し、日本や米国、中国など34カ国・地域が参加した国際会議がスイスのジュネーブで開かれ、「人口密集地における爆発性兵器」(EWIPA)を規制する初の政治宣言がまとめられたことは画期的である。
国連は、人口密集地で爆発性兵器が使用された場合、死傷者の約90%は女性や子どもなどの民間人であると警鐘を鳴らしている。この事実を各国が重く受け止め始めたことは重要だ。
戦争が起こった際に適用されるルールを定めた国際人道法は、民間人や民間施設を狙った攻撃を禁じている。民間人が多く居住する都市部での戦闘は禁止されていないが、民間人や民間施設への被害を最小限にする措置を講じるよう紛争当事者に義務付けている。多くの民間人の死傷者を出しているEWIPAの場合、国際人道法が守られていないことは明らかだ。
従って、今回の政治宣言では、爆発性兵器を人口密集地で使用する場合、民間人や民間施設にどのくらいの被害が及ぶのか事前に予測し、その被害が過大である場合、使用を控えることも含めた適切な措置を講じることなどを明記した。
EWIPAの規制に向けた国際交渉は2019年から始まったものの停滞していたが、今回、政治宣言をまとめることができた背景に、ロシアによるウクライナへの侵略がある。死亡したウクライナの民間人の死因のほとんどが、ロシア軍による爆発性兵器の使用であり、国連のグテレス事務総長は、EWIPAの規制に向けた国際交渉を加速するよう各国に訴えていた。
政治宣言の署名式は年内にアイルランドのダブリンで行われるが賛同国はまだ少ない。多くの国に署名してもらうための外交努力を、日本もしていきたい。