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若者が地方創生を担う
「地域おこし協力隊」10年
89人から4976人へ目標上回る隊員増
都市部の若者が地方に最長3年間移住して活性化に取り組む「地域おこし協力隊」。2009年度の制度創設から丸10年がたつ中、公明党の後押しを受け、自治体の取り組みが当初の想定を上回る広がりを見せている。地方創生の担い手たる協力隊の10年の成果をまとめた。
農林漁業の応援、住民の生活支援
17年度、全国997自治体で4976人の隊員が、農林漁業の応援や住民の生活支援などに汗を流した【グラフ参照】。
スタートした年度はわずか31自治体で89人だったが、公明党が12年末に政権復帰し、地方創生が政権の最重要課題の一つに位置付けられると、隊員数は飛躍的に増加した。政府が14年末に掲げた「16年に3000人」「20年に4000人」という二つの目標は早々に突破した。
任期後、6割が同じ地域に定住
「都市から地方へ、新しい人の流れができた」。協力隊を所管する総務省地域自立応援課の職員は手応えを口にする。同省の調査によると、17年3月末までに任期を終えた隊員の7割以上は20、30代の若者で、同じ地域にその後も住み続ける隊員が約6割に上る。
島根県邑南町で昨年10月に念願の洋食居酒屋をオープンさせた南原悦子さんも、そんな元隊員の一人。広島市内から、定年後の両親が移り住んだ邑南町にやって来て、協力隊に加わった。石見和牛など地元食材を使ったイタリアン・レストランで調理を担当。ここで培った人脈が出店の際に大いに生きたという。南原さんは「協力隊は夢の実現への第一歩だった」と振り返る。
地方への定住支援策として協力隊が成果を上げている要因は、受け入れ自治体には国の財政支援(特別交付税措置)があり、事業に乗り出しやすいからだ。加えて総務省は、現場のニーズ(要望)を踏まえ、使い勝手のいい制度へ拡充を重ねてきた。
例えば、財政支援については、当初、活動期間がおおむね1年以上3年以下の隊員1人に対し、年間の報酬として200万円、活動に必要な経費として200万円を各上限に、合わせて最大400万円を国が負担する仕組みだった。
15年度からは、隊員の待遇改善につなげるため、地理的条件や隊員の能力などに応じて、報酬を50万円上乗せし最大250万円まで支給できるようにした(活動経費と合わせた400万円の上限は変更なし)。
また、任期後の隊員の定住に不可欠な仕事面も後押しする。具体的には、14年度から隊員の起業にかかる経費を、18年度から事業承継の経費をそれぞれ、1人当たり100万円を上限に財政措置の対象に加えた。
こうした財政支援のほか、隊員の生活面にも気を配ってきた。知らない土地に飛び込んだ隊員が孤立しないよう、電話などで相談に乗る「サポートデスク」を16年に都内に開設。併せて、隊員同士の交流の場を各地で積極的に設けている。
19年度からお試し制度
総務省が昨年6月に打ち出した隊員数の新たな目標は「24年度に8000人」。実現に向け、19年度からスタートする目玉事業が「おためし地域おこし協力隊」だ。期間は2泊3日以上とし、地域住民との交流などを体験する。実施する自治体には、宿泊費など年間100万円を上限に国が支援する。
同省によると、1年未満で辞めた隊員が17年は207人に上った。結婚や親の介護、就職・起業といった理由が一定数を占める一方、自治体や地域との「ミスマッチ」を理由にした人が62人いた。仕事の内容や生活習慣の違いなどが着任前の想定と異なり、なじめなかった人も多かったようだ。山形県鶴岡市が同様の取り組みで採用につなげており、これを全国展開する考え。
同省の地域自立応援課は「全国的に人材の奪い合いが激しくなっている。ミスマッチの解消に努めていくとともに、シニア層や在住外国人など、応募者の裾野の拡大にも力を入れていきたい」と話していた。
公明、国や地方で推進
公明党は、地方創生の担い手として、協力隊の拡大に一貫して取り組んできた。特に、青年委員会が14年と15年に政府へ提出した政策集「青年政策アクションプラン」にはそれぞれ、「1000自治体」「隊員数3000人」という目標を盛り込み、国会や地方議会で積極的に推進役を果たしてきた。