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白内障手術で老後を“明るく”
加齢で低下した視力が回復
認知症リスク3割低減 米国での調査
加齢が主な原因で眼球の中の水晶体が濁り、見えづらくなる白内障。効果的な治療法である「眼内レンズ挿入手術」(メモ)への保険適用を公明党が実現してから今年で30年、この白内障手術は年間約150万件が行われるほど広く普及し、最新の研究では認知症の予防効果も明らかになっている。
「世界が一変した」と白内障手術の効果を語る野本さん=5月19日 東京・江東区
気持ちも前向きに
「人の顔も景色も、本当によく見える。世界が変わり、気持ちも前向きになった」――。喜びを語るのは、東京都江東区に住む野本俊夫さん(63)。昨年3月に両目の白内障手術を受け、劇的な効果を実感する一人だ。
野本さんは白内障で右目の視力が0.01に低下、左目はほぼ見えず、心身共につらい状態にあった。初めは手術に抵抗感があったが、眼科を受診する中で不安が和らいだという。手術で両目の視力は0.3に回復し、「これからの人生、どんどん新しいことに挑戦したい」と表情は明るい。
70歳以上で8割超
白内障は、加齢が主な原因で目のレンズの役割を担う水晶体が濁ることで、目がかすんだり、物が二重に見えたりし、次第に視力が低下する病気。70歳以上になると8割を超す人が発症するとされ、高齢社会の進展に伴って「目の健康」を取り戻す白内障手術の重要性は一層高まっている。
こうした中で昨年12月、白内障手術が認知症の予防に効果があることを明らかにした画期的な研究論文が、米ワシントン大学の研究者らによって発表された。この研究では、白内障の診断を受けている65歳以上の男女3038人を対象に白内障手術の有無による影響を比較。平均で約8年にわたる追跡調査の結果、白内障手術を受けたグループは、受けなかったグループよりも、認知症の発症リスクが約3割も低かった。
この効果は複数年にわたって持続し、論文著者らは、白内障手術によって患者や家族のQOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)の向上が期待できると結論付けている。
保険適用、公明が実現 開始30年、推計2500万件に上る
たのは片目だけでも15万円程度かかる白内障手術を、今では多くの人が受けられるようになっ、30年前に公明党が保険適用を実現したからだ。
公明党は1992年2月の衆院予算委員会で、重い手術代に苦しむ生活者の声を代弁。政府から眼内レンズ代も含めた保険適用の方針を引き出し、同年4月に実現した。
それまでに、各地方議会で公明議員が手術への公費助成を訴え、約130の自治体が実施に踏み切っていたことが政府の決断を後押しした。
保険適用を機に白内障手術を受ける高齢者は年々増加し、2020年までに推計約2500万件の手術が行われている。
多焦点レンズでも
さらに公明党は、保険が適用されず全額自己負担となっていた遠近両用の「多焦点レンズ」を用いた手術についても、近年のニーズの高まりを受け、費用負担の軽減に尽力。その結果、20年4月からは、多焦点レンズの手術費用の一部にも保険が適用されている。
具体的には、多焦点レンズの挿入手術に、歯科治療で金歯などの特別な材料を用いる場合と同様の「選定療養」という制度を適用。これにより、保険適用の単焦点レンズを使った場合より余分にかかる差額分(レンズ代など)を追加で自己負担すれば済むようになった。
生活の質を高める治療、公明党の力添えに感謝
日本眼科学会理事長、筑波大学眼科教授 大鹿哲郎氏
目から入る情報は、生活の質の高い人生を送る上で、ものすごく重要だ。白内障手術の技術はこの20年で大きく進歩し、安全性はとても高い。白内障で困っている場合は、過度に恐れず、まずは眼科を受診してほしい。
人は目から脳に入る刺激が減ると、体を動かしたり、対外的な活動をしたりする意欲が減退する。また、視力が悪い高齢者ほど転倒して骨折しやすく、寝たきりに陥りやすい。白内障手術を受けると認知症になりにくいのは、これらのリスクを回避できるためだと考えられる。
日本で眼内レンズの挿入手術への保険適用が認められたのは30年前。これは公明党のおかげであり、何千万人もの人が恩恵を受けている。また、多焦点レンズへの一部保険適用についても、あきの公造参院議員らが親身に相談に乗ってくださった。力添えに感謝している。
メモ 眼内レンズ挿入手術
眼球の中の濁った水晶体を除去し、代わりに人工の眼内レンズを挿入する。一般的に、目薬による局所麻酔を用いて痛みはなく、手術時間は10~20分ほど。1992年4月から保険適用。