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2022年5月31日

世界の子どもの学ぶ権利守ろう

コロナ禍と戦争で危機的に 
途上国は日本の貢献に期待

コロナ禍や戦争が子どもの教育にも危機をもたらしている。学ぶ権利を奪われる子どもたちが増え続けている問題について、途上国への教育支援を行う国際基金「GPE(教育のためのグローバル・パートナーシップ)」(メモ)で活動している松吉由希子氏に見解を聞いた。

メモ GPE(教育のためのグローバル・パートナーシップ)

2002年に世界銀行が主導して設立された教育問題に特化した国際基金。全ての人に公平で質の高い教育を提供することを目的として、世界中から教育のための資金を調達し、教育システムの変革を通じて、途上国が直面する教育の最重要課題を解決すべく、支援を行っている。

GPE(教育のためのグローバル・パートナーシップ) 松吉由希子氏に聞く

――ウクライナの戦禍がもたらした教育の課題は何か。

松吉由希子氏 GPEはウクライナの教育省と連絡を取り合い、子どもたちが何人、どこの国に逃れていて、どのような教育を必要としているかの状況把握を進めている。今の課題は、国外に逃れた子どもや、学校が破壊されて通うことができなくなった子どもに、どのようにしてウクライナのカリキュラムで教育を継続させるかだ。

――避難先でもウクライナのカリキュラムで学ぶ理由は。

松吉 避難先の国で言語を学び直し、さらに内容も違うカリキュラムの下で学習することは、子どもの学力到達度や心理的にも悪影響が出てしまう。ウクライナ避難民の子どもは、隣国のモルドバやポーランドに多くが逃れているが、既に登校拒否やドロップアウトが発生している。

以前、ヨルダンでシリア難民の子どもの教育を支援していた時も同様のことが起きていた。両国はアラビア語で言語は同じだったが、トラウマを抱えて学校に行くのが怖くなってしまう子どももいた。

――日本でも避難民を受け入れている。

松吉 日本でも子どもたちに心理的サポートを提供し、できる限りウクライナのカリキュラムで教育を継続できる環境を提供してあげてほしい。教師が日本にいない場合は、ウクライナか、他国に逃れている先生と、オンラインでつなぐことができるような環境を整えるなどの工夫が必要だ。

基礎教育への投資が国際社会の潮流に

――国際的に見た教育の現状と課題は。

松吉 途上国の基礎教育の教育基盤を強化するための投資が重要だ。学力到達度が低く、ドロップアウトする子どもが増えている国は、低所得国や長年紛争で悩まされている国だ。

GPEは、これまでの外部の機関が途上国において短期的に実施するプロジェクト型の支援ではなく、「システム・アプローチ」を取っている。これは、途上国がオーナーシップ、言い換えると自主性を発揮して公的教育制度を運営していく中で必要となる費用を資金調達し援助。さらには教育行政を強化することができるように長期的なサイクルでサポートしている。

2020年はコロナ禍で、世界中の学校が閉鎖され、最大で16億人の子どもたちが学校に通えなくなり、20年だけで約2400万人の子どもが退学したとの推計もある。

――日本政府の教育支援については。

松吉 日本政府はODA(政府開発援助)での教育支援の額は多いが、中身を見てみると、短期的な個別のプロジェクトや日本の高等教育に学ぶ留学生への奨学金の割合が多い。高等教育に到達できない子どもたちにも目を向けて、基礎教育支援や、途上国の教育システムを持続的に支援することにも力を入れてほしい。

実際、先進7カ国(G7)で日本以外は、途上国の基礎教育や教育システムの改善・強化に力を入れている。残念ながら日本政府のGPEへの拠出総額はG7平均の10分の1にも満たないのが現状だ。

今、日本政府の開発協力大綱(旧ODA大綱)の改定に向けた動きがあり、外務省の国際教育戦略(「平和と成長のための学びの戦略」)も外部評価が実施され、改訂される予定であると聞いている。今後の議論に期待したい。

また、来年のG7首脳会議(サミット)は日本が開催地、議長国だ。昨年の英国はGPEの増資会合を同年に主催し、今年のドイツも国際的な教育支援について大きな比重を置いている。

途上国政府の日本への期待は大きい。政府も政治家も、こうした国際的な潮流を理解して日本の教育支援のあり方を再考してもらいたい。

まつよし・ゆきこ 20年以上にわたり、ユニセフ、ユネスコといった国連機関のアフガニスタン、ヨルダンなどの現地事務所で教育部門のチーフに従事。日本の外務省などで経験を積み、現在、GPEで上級専門官としてアジア地域の教育政策支援やドナーリレーションを総括。フランス駐在。

「人間の安全保障」に基づく支援の強化へ議論を活発化

公明党国際委員長 谷あい正明参院議員

これまで私自身、内戦終結後のアフリカ・スーダン南部や、ヨルダンのシリア難民キャンプ、中東紛争の中心地のパレスチナ自治区ガザ地区などで現地調査を行い、子どもたちの教育支援、留学生の受け入れなどを促進してきました。その中で実感したのは、中長期かつ安定的な国造りには教育が重要だということです。公明党は結党以来、「教育」を中心的な政策に掲げ、教科書無償配布をはじめ幼児教育の無償化などに取り組んできました。しっかりと国際貢献も進めたい。

来年のG7サミットは、日本が議長国であり、教育支援も大きなテーマです。日本政府の開発協力大綱の改定の議論なども活発に行い、「人間の安全保障」に基づく途上国に対する教育支援の強化を訴えていきます。

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