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日本の安全保障のあり方
日米同盟こそ強固な基軸
平和安全法制の整備で抑止力が高いレベルに
静岡県立大学特任教授 小川和久氏に聞く
ロシアによるウクライナ侵略など厳しさが増す国際情勢にあって、日本の安全保障はどうあるべきか。静岡県立大学グローバル地域センターの小川和久特任教授に聞いた。
――ウクライナ問題をどう見るか。
小川和久特任教授 ロシアはウクライナ東部に多くの軍隊を投入しているが、今後も苦戦する可能性がある。ロシアは追い詰められるほど、何をするか分からず、国際社会で緊張が高まっているのが現状だ。
日本にとってウクライナ問題は決して他人事ではない。大国の力による一方的な現状変更の試みに対し、不安の声を聞く。ロシア、中国と隣接する日本も安全保障論議を深める必要がある。
――日本を守るには、どうしたらいいか。
小川 日本の安全を守るには、①日米同盟の活用②どの国とも同盟を組まず、独自に安全保障能力を高める武装中立――の二つしか選択肢がない。武装中立の下、自力で今のレベルの安全を確保しようとすると、防衛費は年間約20兆円以上が必要だと試算されている。一方、日米同盟では、年間5兆円余りの防衛費で世界最高レベルの安全が実現している。
今や、どの国も一国では自国を守れない。各国と連携して抑止力を高めていく必要がある。日本が日米同盟を基にした安全保障を選択するのは現実的、合理的な判断だ。
――日米同盟が果たす役割とは。
小川 日本と米国は守り合う関係で、互いに役割分担をしてきた。米国が日本を守る一方で、日本には米軍が使用する米国有数の規模の燃料や弾薬の貯蔵があり、それを自衛隊が守っている。最も対等に近い同盟関係だ。
ただ、日米同盟を現実に機能させることについては甚だ遅れていた。そうした中、自衛隊が外国で戦争をすることなく、専守防衛を堅持しつつ、日米同盟をフルに機能させる方向へ大きな一歩を踏み出したのが平和安全法制だ。現実的な安全保障政策を進める公明党が連立政権にいたからこそできた。
――平和安全法制によって日米同盟は、どう変わったのか。
小川 日本は日米同盟をより機能させ、備えに万全を期すことが必要だ。その点、平和安全法制は、日米同盟による抑止力のレベルを高めたという点で、制定された意義は大きい。
例えば、平時に日本海で弾道ミサイル防衛の警戒に当たっている米軍のイージス艦が対艦ミサイルで狙われるような場合、日本は海上自衛隊の護衛艦や哨戒機、航空自衛隊の戦闘機などを出して米艦防護をすることができるようになった。日米協力の深化で抑止力、対処力が高まり、日米同盟の信頼性は格段に向上した。
ミサイル、サイバー攻撃の備え固めよ
――今後の安全保障政策の課題は。
小川 平和安全法制によって「存立危機事態」や「重要影響事態」が規定されたが、そうした事態や兆候に直面した場合、直ちに対処できるようにすることが大事だ。
その上で、平和安全法制の下、次の3点を同時並行で速やかに進めなくてはならない。
一つはミサイル防衛だ。中国、ロシア、北朝鮮は台湾や日本に上陸できるだけの軍事力はないが、ミサイルで攻撃できる能力は持っている。ミサイル攻撃を思いとどまらせる抑止力として「反撃能力」を備えることも専守防衛として重要だ。諸外国に比べ日本が大きく遅れているサイバー防衛能力の整備も急がなければならない。
――日本の防衛費のあり方は。
小川 「国内総生産(GDP)比2%」といった額ではなく、自衛隊の適正規模から考えることが基本だ。陸上幕僚監部が算出した、日本の海岸線の長さを基にした陸上自衛隊の適正規模は25万人。現在は定員15万人だ。こうした議論を積み重ねてから予算を決めないといけない。適正規模に近づけることで、大規模災害時に国民を助ける能力が高まり、国連平和維持活動(PKO)にも必要な時にすばやく派遣できるようになるだろう。










