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コラム「北斗七星」
朝、見送った家族は、夜になれば家へと帰ってくる。出会った人とは、またいつか会える。これから先も今日と同じような明日が繰り返し続く――。普段は誰もが疑うことはないだろう◆<「行って来ます」と言って幼稚園に行き、当たり前の様に「ただいま~」と元気に帰ってきてくれるものだと思っていました>。東日本大震災の大津波で宮城県石巻市の佐藤美香さんは、長女の愛梨ちゃんを失った。<3月11日というあの日が今でもなかったら><夢の中でもいいので会いたいです、抱きしめたいです>と亡き娘への愛情を手紙に書いた◆『悲愛
あの日のあなたへ手紙をつづる』(新曜社)の1通である。同書は、東北学院大学の金菱清教授が「震災の記録プロジェクト」として編さんした。震災で失った大切な人や故郷に宛て、あふれる想いを込めた31通の手紙が心に響く◆寄稿したある女性は震災から毎年、亡き娘へ手紙を書いている。年月が過ぎると「ひらがな」か「漢字」で書くか迷うようになったという。6歳で“止まった時間”と、成長したであろう“進んだ時間”とのはざまに引き裂かれているのだ◆あの日からきょうで8年。悲しみと向き合い前へ歩む人がいる。時計の針が14時46分から止まったままの人もいる。被災地へ心を寄せる一日としたい。(川)