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持続可能なウニ産地へ 水産ベンチャーの挑戦
良質コンブ餌にブランド化
岩手・洋野町
地球温暖化に伴う海水温の上昇や少子高齢化、過疎化による後継者不足など、漁業を取り巻く環境は年々、厳しさを増している。こうした中、岩手県洋野町には特産のウニをブランド化し、輸出する一方、海の環境改善へ藻場の再生にも取り組む水産ベンチャー企業がある。持続可能な漁業をめざす産学官の取り組みをリポートする。
水揚げ本州一
岩手県最北の三陸沿岸に位置する洋野町種市地区。太平洋に面し、水深は浅く、干潮時には広い岩盤が現れる地形は本来、養殖漁業には向かない場所だった。だが、約50年前、地元の漁業者が「増殖溝」と呼ばれる溝を岩盤に掘り、良質な天然コンブが繁茂できる環境を整備。ここに稚ウニを放流し、育てる「栽培漁業」が確立され、本州一のウニ産地となった。
しかし、2011年の東日本大震災。大津波に襲われ、がれきや土砂で増殖溝が埋まり、ウニを生産する県栽培漁業センターも壊滅的な被害を受けた。600万個のウニは全滅。水揚げは激減し、他地域に販路が奪われた。
「うに牧場」
その前年、同町出身の下苧坪之典さん(41)は、家業の一部であるワカメ加工業を継いで「ひろの屋」を創業。スタートしたばかりの新事業は津波で大打撃を受けた。しかし、下苧坪さんは曽祖父が明治期、アワビを加工し香港へ輸出していたことを思い出し、事業と町の再生へ奮起した。
14年、「北三陸ファクトリー」と銘打ち、地元漁業者や復興支援の企業関係者と、同町の水産物のブランド化に着手した。増殖溝を掘ったウニの放流地を「うに牧場」と名付け、商標も取得。そこで、4年かけて育てたウニを「洋野うに牧場の四年うに」とのブランドとし、生ウニ、加工品として販路を開拓した。
18年には、金融や商品開発の専門家、Uターンした若者らと「北三陸ファクトリー」を水産ベンチャー企業として法人化、現在は代表取締役CEOを務める。
廃棄物の殻で藻場再生も
産学官連携
実入りが良ければ高値で取引されるウニ。海で繁殖すればもうけもの、と思いきや、藻場を食べ尽くし「磯焼け」の一因とされている。海藻が少なくなると貝類の餌場や魚の産卵、生育場所もなくなる。ウニも食べ物がなくなり、実入りが悪くなる“悪循環”が全国各地に広がっている。
そこで「北三陸ファクトリー」は、北海道大学の研究者らと藻場の再生にも取り組んでいる。
その一つが、磯焼けが発生している海域で駆除されているウニの商品化だ。実入りが悪く、藻場を浸食するだけのウニを捕獲し、新たに開発したエサで畜養する。首都圏の百貨店などで販売したところ、消費者からの評価が高く、出荷量の拡大をめざす。同大学水産科学研究院・浦和寛准教授は、「未利用ウニを藻場の保全・再生に活用したい」としている。
さらに、加工品の製造過程で産業廃棄物となるウニ殻の有効活用も試みている。粉末にしたウニ殻を天然ゴムと混ぜ合わせた「堆肥ブロック」を製造し、海中に沈めて藻場の再生につなげる。実験では海藻の成長促進が確認できた。
公明党も後押し
養殖事業などについて意見交換する、よこやま氏(奥右から4人目)=今年1月
今年1月23日、公明党のよこやま信一参院議員(参院選予定候補=比例区)が北三陸ファクトリーを視察。下苧坪さんは「産学官の連携で、広域の課題となっている磯焼け対策に取り組んでいる。海の環境改善へ支援をお願いしたい」と求めた。
4月19日には、党岩手県本部の小林正信代表(県議)が下苧坪さんと県庁を訪れ、県水産振興課の担当者などと意見交換し、県として磯焼け対策に乗り出すことや、ウニの養殖技術向上などを要望した。
地域振興と温暖化対策を両立
水産学博士 よこやま信一 参院議員
近年、全国各地の沿岸で藻場が失われる「磯焼け」の影響が深刻になっています。ウニの食害を主要因と考える人もいますが、北太平洋では多くのウニがいるのに海藻が豊富な海域はいくらでもあります。一方、三陸沿岸では、海藻の成長力とウニの摂餌量のバランスが崩れることに磯焼けの原因があると考えられていますが、今のところ明確になっていません。
その中で、北三陸ファクトリーの取り組みの特長は、商品価値のない高齢ウニの実入りを良くする技術を開発したことにあります。また、藻場の再生は、コンブなどへ二酸化炭素(CO2)が吸収・貯留される「ブルーカーボン」の量を増やし、温室効果ガスの軽減にも寄与すると考えます。
沿岸の漁業資源回復による地域振興と、地球温暖化の緩和の一歩として、北三陸ファクトリーの挑戦を応援するとともに、ブルーカーボンの取り組みを推進していきます。











