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経済安全保障の推進
答える人=党対策本部事務局長(衆院議員) 伊佐進一さん
半導体や医薬品といった重要物資の安定供給の確保などを柱とする経済安全保障推進法案が今国会で審議されています。同法案の背景や内容、公明党の主張が反映された点について、党経済安全保障対策本部事務局長の伊佐進一衆院議員に聞きました。
■Q 重要性が増した背景は
■A コロナ禍で相次ぐ品不足 サイバー攻撃の脅威拡大
アスカ 経済安全保障(安保)とは。
伊佐 「安全保障」というと、政府の防衛政策を思い浮かべる人が多いと思いますが、民間主体の自由な経済活動も国益を担っています。こうした観点から、経済政策や科学技術政策により国民の生活を守り、国際競争に勝っていける日本をつくることを経済安保といいます。
アスカ 経済安保の重要性が増した背景は。
伊佐 経済活動が世界中で網の目のように絡み合って行われる中、製品や原材料の供給がどこかの国で止まったり滞ったりすれば、日本も甚大な影響を受けることになります。例えば、コロナ禍でマスクや医薬品、半導体などが不足しました。
また、サイバー攻撃の脅威も高まっています。今年3月、大手自動車メーカーが国内全工場の稼働停止に追い込まれたことは、記憶に新しいと思います。米国と中国の関係悪化に加え、ウクライナ危機といったリスクが顕在化し、経済・科学技術政策を安保の観点から捉え直して推進することが重要です。
■Q 法案のポイントは
■A 供給網確保へ事業者支援/官民協力し先端技術開発
アスカ 法案のポイントは。
伊佐 「守り」と「攻め」の両面から“取り組みの4本柱”を定め、企業や研究者らに対し、国が支援や規制を行うこととしました。
「守り」は二つです。国民生活や経済に欠かせない物資を「特定重要物資」として国が指定した上で、サプライチェーン(供給網)の確保に取り組む事業者を認定し、助成などの支援を実施します。
また、サイバー攻撃などで電気やガス、石油、鉄道、通信といった、基幹インフラの提供に支障が生じないよう、その重要設備が特定の外国製品に偏っていないか国が事前審査を行います。
アスカ 「攻め」は。
伊佐 宇宙や海洋、量子、人工知能(AI)などの分野における先端技術の開発を、官民が協力し進めます。国が情報提供や資金支援を行う一方、企業側にも守秘義務を課します。
最後に、特許出願の非公開制度の導入です。特許情報は原則、取得すると全て公開されることから、軍事転用できるような特許技術が外部に流出することを防ぐ狙いです。
■Q 公明の主張、どう反映?
■A 国調査拒否に罰則設けず 特許非公開の企業に補償
アスカ 法案に反映された公明党の主張は。
伊佐 自由な経済活動は日本の成長の原動力です。過度な規制で経済活動を萎縮させてはなりません。公明党は法案策定段階から、自由経済と安保の両立を強く主張しました。その結果、法案には、規制措置は「安全保障を確保するため合理的に必要と認められる限度において」行うと明記されました。
アスカ 現場の事業者の声も届け、反映させました。
伊佐 そうです。例えば、「特定重要物資」指定に向けた国の調査は、全ての企業に広く及ぶ可能性があります。競争力確保の観点から調達先情報を秘密にする企業もあることから、国への資料提出を拒んでも罰則が科されることがないようにしました。
また、特許出願の非公開制度の導入に関しても、事業者が不利益を被らないよう、公開すれば得られたはずの特許収入を国が補償するようにしました。
同法案は、今月にも成立の見通しです。大事なのは成立後です。事業者と連携を密に取りながら、必要に応じて政府に働き掛けていきます。