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命つなぐドクターヘリ
全都道府県で運航実現
今月から、計56機の体制に
22年間で28万件出動 救命率3割向上
“空飛ぶ救命救急室”が、ついに日本全国の空をカバー――。医師や看護師を乗せて傷病者のもとに急行するドクターヘリが今月18日に香川県に導入されたことで、全都道府県での運航が実現。計56機を運用するまでに広がった。公明党が国と地方のネットワークの力を生かし、強力に推進した。
ドクターヘリは、人工呼吸器などの医療機器や医薬品を装備したヘリコプター。消防機関などから要請があれば数分以内に基地病院を離陸し、時速200~250キロで、へき地や離島を含む救急現場に急行する。道路事情に左右されないため、陸路などに比べて搬送時間を大幅に短縮できる。
搬送中に機内で治療できるのも特長で、後遺症の軽減や救命率の向上にも貢献してきた。厚生労働科学研究によると、ドクターヘリの出動で治療開始が早まることにより、地上での救急活動に比べて救命率が約3割向上し、社会復帰できた人は約1.5倍に上ると推定されている。
2020年度には全国で年間2万5469件の出動があった。過去22年間の出動件数は累計で28万件を突破している。
なお、47都道府県のうち京都府のみ単独での導入ではなく、所属する関西広域連合のドクターヘリ3機によって府内全域をカバーしている。
東京都は、長距離飛行が可能な東京消防庁の中・大型機を用いた独自の“東京型ドクターヘリ”を運航してきたが、機動力が高く、全国的に普及している小型機も今年3月末に新しく導入した。
中国5県などでは、いち早い患者の治療が可能となるよう、ドクターヘリが県境をまたいで相互に乗り入れ、患者を搬送できる広域連携体制を構築している。全国運航により、弾力的な運用の一層の拡大が期待される。
特措法制定で導入加速
ドクターヘリは、1999年に国のモデル事業が実施され、2001年度から5県で本格運航が始まった。
しかし、導入したくても財政負担が厳しい自治体もあったことから、公明党は04年にプロジェクトチームを設置し、全国的な配備を促進する法案作りに着手。07年の特別措置法制定を主導した。これを機に自治体への財政支援が整い、地方議会での公明党の粘り強い主張もあって、導入が加速した。
13年には公明党の推進で航空法が改正され、大規模災害時などに消防機関からの通報・要請がなくても迅速に出動できるように。これにより16年の熊本地震では、救命活動でドクターヘリが大きな力を発揮した。
■国・地方での推進に感謝。公明は大変に心強い味方
認定NPO法人救急ヘリ病院ネットワーク 篠田伸夫理事長
今回、ドクターヘリ特措法の目的に掲げられた「全国的な確保」が達成され、普及に努力してきたわれわれも、うれしく思っている。
全国導入に向けて、公明党は国政での推進はもとより、各都道府県議会でも知事に必要性を力説し、端緒を開いたケースが多い。本当に命を尊ぶ党として、大変に心強い味方だと思っており、感謝している。
ドクターヘリの先進国ドイツでは、15分以内に適切な初期治療を行う「15分ルール」がある。日本でもこのルールを確立するには、自治体によっては複数機の導入や、都道府県の枠を超える広域連携が重要になる。実現に向けた公明党の尽力を期待している。