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【主張】がんの緩和ケア 専門医養成など一層推進を
国立がん研究センターは先月、終末期の療養生活に関する実態調査の結果を公表した。がんで亡くなった人の遺族約5万4000人の回答をまとめたものだ。
これによると、がん患者が亡くなる直前の1カ月間、息苦しさや痛みといった「からだの苦痛が少なく過ごせた」「おだやかな気持ちで過ごせた」との答えは、いずれも4割台だった。
心身の苦痛は、患者の療養生活の質を左右する。患者の肉体的な痛みを除去し、精神的なつらさを和らげる、がんの緩和ケアの提供体制を一層強化する必要がある。
緩和ケアの実施は、公明党が強力に推進し2007年に施行された「がん対策基本法」に盛り込まれ、医療従事者向けの研修や、がん診療連携拠点病院に専門のチームを設けるなどの取り組みが進められている。
今回の調査結果では、患者が亡くなった場所で受けた医療について、「医療者が患者のつらい症状に対応した」「患者の不安や心配を和らげるのに努めた」との回答は8割以上に上った。取り組みが一定の成果を上げていると言えよう。
一方で、実際に心身共に安らかに過ごせたとの回答は、前述の通り4割台にとどまっている。理由の一つは、緩和ケアの専門医が質量共に十分でないことだ。がん患者の痛みはさまざまで、投薬だけでは抑えられないケースも少なくない。多様な状況に対処できる専門医の養成に力を注ぐことが今後の課題である。
今回の調査結果によると、最期の療養場所や心肺停止時の蘇生措置の実施について、医師と患者の間で話し合いがあったとの回答は3割程度だった。
患者の希望に添った医療を提供するには、医療側からの情報に基づく患者本人の意思決定が重要だ。患者との意思疎通のあり方について改善の余地があろう。
緩和ケアについては、終末期だけでなく、がんと診断された時点で行うことも重要だ。がんを宣告された衝撃を和らげ、安心して治療に臨めるようにする取り組みを進めたい。