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【主張】電力需給の逼迫 供給体制の点検・強化を急げ
東京、東北両電力管内を対象に初の「電力需給逼迫警報」が発令された。万が一、広域で停電が発生すれば、暮らしや経済活動に甚大な影響が生じる。改めて電力供給の体制を見直し、災害などへの備えを強化すべきだ。
今回の警報発令は、16日の福島県沖を震源とする強い地震によって、一部の火力発電所が被災して運転を停止している上に、気温低下で暖房機器の利用が増加したことなどが背景にある。
逼迫警報は、東日本大震災で電力不足に見舞われたことを機に2012年に設けられた制度で、電力の供給力に対する使用率が97%を超える恐れがある場合に出される。
一時、数百万戸に及ぶ大規模停電の恐れが高まったものの、家庭や企業への節電要請や他の電力会社からの電力融通などで何とか回避できた。今後、日射量が増えて太陽光発電が稼働するなどしても、復旧に1カ月程度を要する火力発電所もあり、電力が不足しかねない状況は続く。
これまでも、夏や冬の電力需要が増える時期に需給逼迫の危機に陥ることがあった。今後も、同様の事態が起こる可能性は否定できない。
大切なのは、各電力会社の供給力を高めるなど、需給逼迫を防ぐ手だてである。公明党の山口那津男代表が会見で「予備的な供給能力も含め、あらゆる電源を点検しながら安定供給の基礎を確保する必要がある」とし、政府に検討を強く求めたのは当然だ。
今回は、特定地域で電力不足が生じた場合、電力会社の間で電力を融通し合う送電網の課題も露呈した。東電が受けた電力融通は最大で約140万キロワットだったが、中部電力以西からの融通は送電線の容量に上限があるため60万キロワットにとどまった。
融通の際は、東西で電気の周波数が違うため、変換設備で周波数を変える必要がある。送電網増強の必要性は東日本大震災後に指摘され、融通設備の容量は増しているが、安定供給の観点からも、さらなる拡大が求められる。
政府は、警報発令のタイミングや情報発信のあり方など、今回の一連の対応を検証する方針だ。医療機関など人命に及ぶ施設への点検も早急に行うべきである。