ニュース
豪雪地帯で相次ぐ雪下ろし中の死傷事故
日本の国土の半分を占め、冬に大量の雪が降り積もる「豪雪地帯」。高齢化の加速などを背景に、雪下ろしなどの除雪作業中の死亡事故が相次ぎ、防止などに向けた対策が喫緊の課題となっている。今冬も厳しい寒波に見舞われている新潟県の除雪現場とともに、公明党の推進で動き出した政府の取り組みを紹介する。
高齢化で担い手不足
作業援助など自治体は奮闘
除雪作業をする飯塚さんを見舞う宮沢市議(左)=6日 新潟・十日町市
見渡す限りの深い雪に包まれた、日本有数の豪雪地帯、新潟県十日町市。大みそかから続いた大雪がやみ、数日ぶりの晴天に恵まれた今月6日、市内の家々は除雪作業に追われていた。
「これをしないと家から出られなくなる」。浦田集落に住む飯塚一枝さん(69)は、エンジンを動力に雪を吹き飛ばす家庭用除雪機を操作し、自宅の玄関をふさぐかのように積もった雪の“壁”を崩しながら、道路まで掘り進めていた。
同集落には、80歳を過ぎてなお自ら除雪機を操る人もいるという。「この先どうなるか。日々、雪かきをするという“冬の日常”の維持が年々難しくなっている」と、飯塚さんは集落の人々の間で募る不安を代弁。飯塚さんを見舞った公明党の宮沢幸子市議は、「除雪作業の担い手確保に知恵を絞りたい」と語った。
「若い頃は作業できていた人も、高齢になり事故に遭いやすくなっている」。連日、市道や県道の除雪業務に従事し、浦田集落で高齢者の家の雪下ろしなども請け負う株式会社飯塚建設の飯塚大輔代表取締役は、悲痛な表情を浮かべた。
同市では、高齢者世帯などを対象に、屋根の雪下ろしを業者に委託する費用などを年間3万5000円まで援助しているが、需要は年々増加。予算確保が大きな課題になっている。
高齢化を背景に、除雪作業中の死傷事故は全国的に増加が続く。2012~21年の10年間における雪害の死者数は700人超に上り、20年前(1992~2001年)の266人と比べて約3倍に増加。昨年度の豪雪では全国で110人が亡くなり、その多くが除雪作業中の高齢者だった。
ゲリラ豪雪頻発
県、対応に苦慮
短時間に降雪が集中するゲリラ豪雪の頻発化といった、異常気象の影響も切実だ。公明党の安沢峰子・新潟県議は7日、県長岡地域振興局を訪れ、今冬の大雪への対応などを巡って県の担当者と意見を交わした。
ゲリラ豪雪が相次ぐという、これまでに経験したことのない事態への対応に県が苦慮している実情を聴き、安沢県議は「党のネットワークを通じ、国に声を届けるなどして課題の解決を進めていきたい」と語った。
安全確保へ国が交付金
公明推進、装備品購入など補助
除雪時の死傷事故を防ぐ体制強化に向け、昨年12月に成立した国の21年度補正予算には豪雪地帯への新たな支援策が盛り込まれた。自治体や地域の将来を見据えた除雪体制づくりを国が支援する、「豪雪地帯安全確保緊急対策交付金」の創設だ。同交付金は、自治体や集落の対応方針の策定を支援しながら、その試行的な取り組みに補助を行う。
補助対象は、要援護世帯の屋根雪下ろしに対する支援のほか、除雪に必要な装備品や資機材の購入支援、作業の担い手を育成する安全講習の開催など。既に十日町市などの自治体が交付金の活用を検討しており、同市の池田克也副市長は「国の積極的な支援はありがたい。県や市で行ってきたさまざまな施策を、より手厚くできる」と歓迎する。
公明党の豪雪地帯対策推進プロジェクトチーム(PT、座長=稲津久衆院議員)は、同交付金の創設を強力に推進してきた。昨年6月には全国積雪寒冷地帯振興協議会の花角英世会長(新潟県知事)からも強い要望を受け、政府に繰り返し働き掛けるなど、実現に尽力。昨年12月の衆院本会議では斉藤鉄夫国土交通相(公明党)が、公明党の代表質問に対して交付金の創設に触れ、「総合的な豪雪地帯の対策に全力で取り組む」と答弁していた。
特措法拡充し地域支える
党豪雪地帯対策推進プロジェクトチーム座長 稲津久 衆院議員
豪雪地帯は、日本の国土の中でも特に人口減少・高齢化が著しい地域だ。厳しい冬の除排雪体制をこれまで地域住民や自治体、事業者らの奮闘によって維持してきたが、深刻な担い手不足に直面しつつある。国として、どう支えていくかが今、問われている。
その意味で今回、公明党の主張を反映し、新たな交付金が創設されたことは大きな前進だ。豪雪地帯の課題に、政府が積極的に対処していこうという姿勢が表れている。豪雪地帯は農林水産が基幹産業であり、こうした地域の振興は日本全体の暮らしにも直結する。
「豪雪地帯対策特別措置法」が今年3月末に期限を迎える。今月17日召集の通常国会では、同法を改正し期限の10年延長を実現したい。そこでは、中長期的な対策拡充に向けて、今回創設された交付金をしっかりと位置付け、豪雪地帯を支える安定的な予算確保につなげていく決意だ。