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【主張】ロシアの軍事侵攻 民間人の被害増加に深刻な懸念
ロシアが軍事侵攻しているウクライナで、民間人の被害者が日を追うごとに増え続けている。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が5日に公表した統計によると、民間人の死者は351人、負傷者は707人に上る。
激戦地での情報収集が遅れているため、実際の被害者数は、もっと多いだろうとOHCHRは指摘している。
ロシアは身勝手な理屈を掲げて始めた破壊と殺りくを今すぐやめるべきだ。
国際社会の大多数の意思は示されている。2日の国連総会緊急特別会合で、ロシアを非難する決議が141カ国の賛成多数で採択された。反対はロシアやベラルーシ、北朝鮮など、わずか5カ国だ。
国際社会の秩序を維持するための最も重要な国際法規範は、武力の行使や威嚇を禁じた国連憲章第2条4項である。決議は、ロシアのウクライナへの軍事侵攻を国連憲章第2条4項に違反する「侵略」であると強く非難し、ロシア軍が即刻、無条件で撤退するよう要請した。日本は決議の共同提案国となった。
決議では、民間人に死傷者が出ていることに対して「深刻な懸念」も表明した。この点については、決議の採決を棄権した中国も「民間人の生命と安全は守られるべきだ」との見解を示している。
OHCHRは、複数のロケット弾を一斉に発射する多連装ロケット兵器などをロシア軍が使用していることが、民間人の被害者の増加につながっていると指摘している。
ロシアはTOS―1Aという多連装ロケット兵器をウクライナに持ち込んでいる。高威力で、広範囲の標的を破壊できる気体爆薬を用いた弾頭を最大で24発連射できる。
国連総会緊急特別会合では、米国の国連大使が「気体爆薬はジュネーブ条約で禁止されている」と誤った発言をし、この発言は訂正された。気体爆薬の使用は禁じられていないが、国際人道法を構成するジュネーブ条約は、戦闘員と民間人を区別しない無差別攻撃を禁止している。
OHCHRの指摘の通り、ロシア軍がTOS―1Aのような兵器を使用することで民間人の被害者が増えているのであれば、国際人道法にも違反していることになる。