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全国各地で実施! 無症状でもコロナ無料検査
「不安払拭でき助かる」利用者
早期発見・治療にもつながる
無症状ながらも、新型コロナウイルスへの感染に不安を抱える人やワクチンを受けられない人のための「無料検査」が各地で実施されている。昨年12月に成立した国の2021年度補正予算に盛り込まれた、地方創生臨時交付金の「検査推進枠」(3200億円)によって補助される事業で、公明党が推進した。新たな変異株「オミクロン株」による感染者の急拡大が懸念される中、東京都の委託を受け、検査を行う民間施設を訪ねてみた。
無料検査を受けに来た人に予約の有無などを確認する検査センターのスタッフ(右)=11日 東京・新宿区
「全国で感染が広がり怖くなった。家族にはうつせない」――。今月11日、東京都新宿区にある「木下グループPCR検査センター新宿店」で無料のPCR検査を受けた男性(60)はこう語る。男性は今月初旬にレジャーで他県を訪問。症状はないものの、「もしかしたら自分も感染しているのでは」と心配に。数日間、ホテルに滞在し、検査によって陰性が分かれば、自宅に戻るという。
同じく検査を受けた都内の専門学校に通う女性(19)は、年末年始に愛媛県に帰省。新学期が始まれば授業などで人に会うことが多くなるため、「無料で感染の不安が払拭でき、助かる」と胸をなで下ろしていた。
陽性なら受診勧奨、行政に情報共有も
同センターでは、新型コロナのPCR検査と抗原定性検査を実施。どちらも検査自体は、唾液などを採取し、3~5分程度で終了する。PCR検査は翌日中に、抗原定性検査は最短3時間で結果が通知される。陽性で感染が疑われる場合は、医療機関の受診を勧められるほか、都にも情報が共有される仕組みだ。1日約700件の検査を行える。
当初は予約なしでセンターを訪れた人にも対応していたが、希望者が増加したため、完全予約制としており、「当日までに予約は、ほぼ埋まってしまう状態」(担当者)だという。
PCRなどの検査は、発熱といった症状があったり、濃厚接触者になった場合には、全額公費負担となり、医療機関などで無料で受けられる。しかし、無症状者が検査を行う場合は、数千円の費用を全額自己負担せざるを得ない。
東京都、年末年始1週間で4.2万件
国の補正予算成立を受け、東京都では昨年12月23日から、健康上の理由でワクチンを受けられない人などを対象に無料検査を開始した。同センターのような民間の検査機関や薬局などに委託している。オミクロン株の市中感染の確認などを踏まえ、同25日には、無料検査の対象を「感染不安を抱える都民」に拡大。13日現在、都内187カ所で実施し、さらなる拡大を図る。
12月27日~1月2日の1週間で約4万2000件の検査を行い、感染疑いの事例が17件報告された。都の担当者は、「幅広い人に検査を受けてもらうことで、感染への不安を払拭するだけでなく、早期発見・治療につながる可能性もある」と意義を説明する。
都以外の自治体でも同様の取り組みが広がっており、大阪府では12月24日から始まった。現在、府内250カ所以上で検査を受けられる。府の担当者によると、今後も検査体制の強化を進め、最終的には「450カ所」に広げる方針だ。
公明提案で国が予算確保
感染増受け、46都道府県が対象拡大
加藤官房長官(中央右)に無料検査の実施を提言する党コロナ対策本部のメンバーら=昨年9月24日 首相官邸
国の地方創生臨時交付金の「検査推進枠」は、公明党の提案を受けて設けられた。党新型コロナウイルス感染症対策本部(本部長=石井啓一幹事長)は昨年9月、加藤勝信官房長官(当時)に対し、質の高い検査が容易かつ安価・無料で受けられる体制整備を急ぐよう訴え、特にワクチンを接種できない人の検査費用無料化などを提案した。
12月10日の参院本会議の代表質問では、山口那津男代表が補正予算の内容を踏まえ「どのような状況で無料検査が可能となるのか」と質問。岸田文雄首相から「(感染状況などが)警戒を強化すべきレベル以上であると知事が判断した場合に実施する」との答弁を引き出していた。
今月12日には、岸田首相に対し、党対策本部などが、急速な感染拡大を踏まえた緊急提言を行い、有症状者などが対象となる行政検査以外の検査体制強化や、体制整備の経費、検査費用を国が負担することなどを訴えた。
無料検査は、ワクチン接種済証や陰性証明の提示による行動制限の緩和に向け、健康上の理由でワクチンを受けられない人などを対象に、全都道府県で実施されている。加えて、コロナの感染者が増加する地域においては、都道府県知事の判断で、感染への不安を抱える一般の無症状者も対象にできる。
すでに、46都道府県(13日現在)が無症状者にも対象を拡大している。