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コロナ 国産飲み薬と公明党
党ワクチン・治療薬開発推進プロジェクトチーム
あきの公造座長(参院議員)に聞く
新型コロナウイルス感染症の国産経口薬(飲み薬)の実用化が目前です。塩野義製薬は、臨床試験(治験)データが整い次第、月内にも政府に承認申請する見通しです。軽症・中等症向けとしては世界で3番目。早期実用化に向けた公明党の取り組みについて、党の新型コロナウイルス感染症ワクチン・治療薬開発推進プロジェクトチーム(PT)の、あきの公造座長(参院議員)に聞きました。
月内にも承認申請
早期実用化を後押し
塩野義と開発段階から連携
――国産飲み薬の意義は。
軽症・中等症向け飲み薬はコロナ対策の切り札です。自宅で簡単に服用できるのが最大の利点で、病床逼迫の回避など医療現場の負担を軽減できます。将来にわたる安定供給のためには、過度の輸入に頼らなくて済む国産の実用化が不可欠です。
塩野義製薬が開発中の飲み薬は、既に実用化された米メルク社製や米ファイザー社製と比べ、治験に参加した日本人の数が多く、国民にとっての安心材料といえます。
――公明党の取り組みは。
2020年5月に各党に先駆けて設置したPTで関係者への聞き取りなどを行い、国内外の動きを注視してきました。国産飲み薬についての転機は、昨年4月16日の塩野義製薬との意見交換でした。全国で高齢者向けワクチン接種が始まり、党として円滑実施に尽力していた頃です。塩野義製薬の順調な開発状況を踏まえ、早期実用化を後押しするカギは「条件付き早期承認制度」との結論を得ました。
――どういう制度ですか。
十分な有効性が示された場合、最終段階の治験が完了する前の実用化を認めるものです。治験実施が困難な希少疾患向け医薬品などが対象で、コロナ関連は適用外のため、同28日の政府への緊急要望でワクチンへの適用を検討するよう要請しました。開発が進んでいた国産ワクチンを例に挙げましたが、国産飲み薬も念頭に置いた提案でした。
――布石だったと。
その通りです。昨年6月に閣議決定された「ワクチン開発・生産体制強化戦略」には、公明党の主張を踏まえた内容が明記されました。以降は、飲み薬への制度活用を政府に改めて訴える時期を待ちました。これと並行し、開発企業の支援も強力に推進した結果、政府のコロナ対策の全体像などに盛り込まれました。
塩野義製薬での実用化が近づいた今月7日の衆院予算委員会で、公明党の稲津久氏の提案を受け、岸田文雄首相は「臨床試験で安全性や有効性が示された場合、条件付き早期承認制度も含めて、あらゆる手法の活用を視野に迅速に審査したい」と明言。承認されるまでしっかり見届けていきます。
必要量の確保急ぐ
国費購入、政府から言質
――国産飲み薬の確保に向けては。
国産は確実に確保できると考えるのは軽率です。軽症・中等症向け飲み薬は、世界に二つありますが、塩野義製薬の飲み薬を巡る争奪戦も水面下で始まっています。必要量の確保を急ぐ観点から公明党は既に手を打っています。
――具体的には。
昨年9月24日の政府への提言で、治験が成功した場合に一定量を国費で購入する基本契約を製薬メーカーと締結することを要請。当時の官房長官から「抜かりなくやりたい」との言質を取りました。その後も国会質問や提言で訴えた結果、21年度補正予算に国産確保にも使える費用6075億円が計上されました。
さらに、今月8日に政府へ申し入れた緊急要請で、製薬メーカーとの基本合意を速やかに結ぶよう重ねて主張。18日の衆院予算委員会では公明党の伊佐進一氏の質問に対し、岸田首相は、治験で安全性と有効性が確認されれば、承認を前提に購入契約を結ぶことが可能だと説明しました。
海外産飲み薬を巡る動き
2種類 国内で投与始まる
国内で承認されている軽症・中等症向け飲み薬は現在、①米メルク社製「モルヌピラビル」②米ファイザー社製「パキロビッドパック」――の海外産の二つのみ。いずれも発症から5日以内の投与が必要です。
モルヌピラビルは昨年12月に承認されました。入院や死亡のリスクを約30%下げる効果があるとされます。政府は、メルク社との間で160万人分の供給で合意し、うち80万人分は年度内に供給される見通しです。厚生労働省によると、今月15日時点で全国の医療機関や薬局に約12万6000人分が配送され、約5万人に投与済みです。
パキロビッドパックは今月10日に承認。入院や死亡のリスクが約89%低下する試験結果が出ています。政府はファイザー社と200万人分購入することで最終合意し、4万人分の配送が始まっています。飲み合わせに注意が必要なことから、27日までは約2000の医療機関や薬局に限定して使用することになっています。