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不妊治療保険適用と公明党
提言重ね負担軽減へ
署名や助成創設で道筋付ける
不妊治療を望む男女の負担を軽減――。公的医療保険が利かずに高額になる場合が多い不妊治療で、今年4月から保険適用範囲が人工授精や体外受精などにも広がる。厚生労働相の諮問機関が9日に答申した2022年度診療報酬改定案に適用拡大が盛り込まれたもので、患者の自己負担は原則3割で済むようになる。実現に向けては、公明党が不妊に悩む当事者の声を受け止め、20年以上にわたり粘り強く前進させてきた。
現在、不妊治療を経験している夫婦は約5.5組に1組といわれる。日本産科婦人科学会によると、19年に体外受精や顕微授精といった高度な治療で生まれた子どもは過去最多の6万598人。同年の出生児の約14人に1人に相当する。
しかし、もともと同治療の公的支援に対して国の壁は厚かった。一例が1998年9月の国会答弁だ。当時、参院公明の議員が保険適用を主張したのに対して、当時の厚生省は「成功率といった医学的な問題や社会的な合意などで踏み切れない」と消極的だった。
出産はあくまでも個人の自由意思が大前提にある。だが同時に、出産を強く望みながら不妊に悩む夫婦への経済的支援は欠かせない。その信念から、公明党は98年11月の新生公明党結成大会で「保険適用の実現」を盛り込んだ基本政策大綱を採択。国会質問でも繰り返し主張し、2000年には党女性委員会が人工授精や体外受精への保険適用を求める約55万人分の署名を政府に提出した。
この結果、04年度には当時の坂口力厚労相(公明党)のリーダーシップもあり、治療費助成の形で国が支援を開始。その後も公明党の推進で増額や所得制限の緩和などが行われ、党地方議員も自治体独自の上乗せ助成などを実現してきた。
公明党は国民との約束を形にする政策実現政党だ。20年6月には、保険適用に向けた検討を開始するよう政府に提言。政府は翌7月に決定した「女性活躍加速のための重点方針」に「医療保険の適用のあり方」を含めた経済的負担軽減を検討するための調査研究を行うと明記した。
当時の菅首相(中央右)に提言を申し入れる党PTの伊佐座長(同左)ら=20年11月17日
さらに同9月、菅義偉首相(当時)が保険適用の拡大と移行までの助成拡充に取り組む方針を示し「公明党から強い要請を受けている」と明言した。
これを受け、公明党としても不妊治療等支援推進プロジェクトチーム(PT、座長=伊佐進一衆院議員)を設置。当事者らとの意見交換を踏まえて首相に提言し、一層の経済的負担の軽減や保険適用に際しての治療の質確保などを推進してきた。
産み育てやすい環境の整備さらに
党プロジェクトチーム座長 伊佐進一衆院議員
今回、ついに国民皆保険制度に不妊治療の適用拡大が組み込まれたことは、四半世紀にわたる公明党の取り組みの成果だ。これまで行われてきた治療の水準を落とさないことや、安全性・有効性のあるものを過不足なく保険適用対象とすることなど、現場の声が反映されたものと評価できる。
適用開始後、さらに改善が求められるものがあれば、党として政府に対応を訴えたい。
一方、子どもを産み育てたい人への支援には、治療と仕事の両立、流産・死産などを経験した人へのケアをはじめ、結婚支援、里親・特別養子縁組といった環境整備も重要だ。地方議員と連携し着実に後押ししていく。
4月から 体外受精など範囲拡大
不妊治療は、これまで原因検査などが保険適用対象だったが、診療報酬の改定により、精子を子宮に注入する人工授精をはじめ、体外受精(採卵し体外で受精)や顕微授精(卵子に精子を人工的に注入)、採卵、胚の培養、凍結保存、精子の採取も対象となる。
体外受精や顕微授精は、治療開始時に女性が40歳未満なら子ども1人につき6回まで、40歳以上43歳未満は同3回までが条件。現行の助成金の支給回数に関係なく適用される見通しだ。男性側の年齢には年齢制限はない。事実婚のカップルも対象とした。
21年3月に公表された厚労省の調査によると、体外受精の費用は1回平均約50万円だった。保険が適用されれば、1カ月の自己負担額の上限を定めた高額療養費制度も使えるようになり、治療を希望する人の経済的負担の軽減が期待されている。