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コラム「北斗七星」
コロナ禍の在宅時間を使い、新しいことに挑戦する人が増えている。ある壮年は大学時代に研究した『更級日記』を読み直していると教えてくれた。「実はパンデミックのことが書かれている」とも◆作者は菅原孝標女。約千年前の平安中期に書かれた自叙伝だ。孝標女が数え14歳の頃、大流行した伝染病で乳母や同世代の知人を相次いで失った。ショックでふさぎ込んだ作者が立ち直るきっかけになったのは、叔母からもらった源氏物語五十余巻だった◆孝標女は物語を朝から晩まで読みふける喜びを「后の位も何にかはせむ」と記している。元気になった孝標女は千年も読み継がれる文学作品を残した。良書には心を癒やし人生を変える力があるのだ◆神戸市は3月下旬、子どもたちに震災の教訓を踏まえ命の大切さを学んでもらおうと文化施設「こども本の森 神戸」を開館する。建築家・安藤忠雄氏が設計し、同市に寄贈したものだ。安藤氏は未来を担う子どもたちに「出来るだけ多くの本と出会い、豊かな感性を育んで貰いたい」と言葉を寄せる◆昨年夏、同施設に並べる児童書を募集したところ、市民らから2万冊以上が提供された。感染拡大で思うに任せない生活を強いられてきた子どもたちを励ましたい。心ある大人がエールを送る気持ちは、今も昔も変わらない。(鷲)