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若者世代、安心の未来へ
格差問題 山田昌弘・中央大学教授に聞く
内閣府が7日に公表した「日本経済2021―22」(ミニ経済白書)では、若年層の所得格差が拡大している現状が浮き彫りになりました。そこで、求められる方策について中央大学の山田昌弘教授に聞くとともに、公明党青年委員会(委員長=矢倉克夫参院議員)の取り組みなどを紹介します。
中間層の拡大が重要
――ミニ経済白書では、若年男性の非正規雇用比率の上昇による所得格差の拡大や、所得500万円未満で子どもを育てる夫婦の割合低下などが指摘された。
山田昌弘・中央大学教授 潜在的にあった若年世代の格差問題がよく分かった。コロナ禍はその状況をより鮮明にした。特に大きな影響を受けた飲食、観光、接客の各業種は非正規雇用が多く、職を失ったり仕事が減ったりするなど事態の深刻さがあらわになった。また、それらの業種は女性の就業者が多く、国の調査でも男性より女性の失職が多かったことが判明している。
正規と非正規の間には賃金の差だけではなく、「いざというときに守られるか、守られないか」という厳しい現実が存在する。コロナ禍はその格差を改めて可視化させた。また、婚姻数と出生数が減少しており、結婚後の生活基盤を見通せないカップルが増えている可能性が高い。
――党青年委は2020年8月に政府に提言した「青年政策2020」で、若者世代の将来不安の解消に向け、低所得層に加えて中間層への支援も強調し、その一環として希望する非正規雇用労働者の正規化を後押ししてきた。
山田 中間層の拡大は非常に重要だ。これは、単に中間層の賃金を上げれば済むという話ではない。中間層を増やすためには、低所得層であっても普通に頑張れば中間層になれる仕組みが求められる。党青年委の提言のように、希望する非正規労働者の正規化を後押しする施策などが必要だ。加えて、正規と非正規のさまざまな格差を埋めていかなければならない。
――具体的には。
山田 例えば、育児休業(育休)が挙げられる。正規は育休が取れるが、非正規は取れずに退職を余儀なくされるといったケースはなくすべきだ。また、地方に目を向けると、男性は正規だが女性は契約社員といった格差が残っている企業が多数あるのも現実だ。
雇用形態の待遇差、改善急げ
――今後、求められる政策は。
山田 柔軟な働き方をより一層認めるとともに、雇用形態による待遇差の改善を急ぐことだ。
例えばオランダでは、警察官でも週5日働く人と週3日働く人がいて、それぞれが労働時間に見合った給与を得ている。官民問わず正規、非正規との区別がなく、失業手当に加え、企業が解雇した人に次の仕事をあっせんするといった制度面にも差がない。こうした仕組みを整え、普通に頑張れば中間層になれる社会を構築することが、若者の将来の安心に不可欠であろう。
党青年委、賃上げなどを推進
VAのアンケートボードを手に若者の声を聴く矢倉氏ら=2021年5月 茨城・日立市
ミニ経済白書の分析結果を受け、公明党の竹内譲政務調査会長は9日、男性の非正規雇用比率の上昇などを格差拡大の背景に挙げつつ、未婚の単身世帯を含めた非正規雇用で働く人について、「所得向上に向けた支援や、セーフティーネット(安全網)の強化が重要だ」と訴えました。
若年層の所得格差の問題に関しては、党青年委も「青年政策2020」の中で、▽賃上げや非正規雇用労働者の正社員化を行った企業への支援▽医療や介護、教育など社会生活の基盤を支える人の賃上げ▽男性の育休の取得推進や育休を取得しやすい社会の構築――などを訴え、施策を推進。21年のボイス・アクション(VA)では、若者支援策として、結婚から子育てまでのサポートの充実などを掲げました。
その上で、党青年委は現在、未来の安心を保障するために必要な政策を「青年政策2022(仮称)」として取りまとめようと、若者の声を基に議論を進めています。