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【主張】日本産食品の輸入 台湾が規制緩和、風評払拭にも
台湾当局が8日、福島県など5県産の食品に実施してきた輸入規制を近く緩和する方針を発表した。きのこ類や野生鳥獣肉などを除き、放射性物質検査報告書や産地証明書の添付を条件に輸出が可能となる見込みだ。
台湾内で手続きが順調に進めば、今月下旬にも輸入停止措置が解除される。東京電力福島第1原発事故後から約11年ぶりとなる。
台湾当局の決定は、科学的評価に基づく正当な判断であり歓迎したい。台湾では規制緩和に反発する声も根強いが、質の高い日本産食品の輸入は台湾の人々のメリットも大きいはずだ。
台湾の輸入規制の影響を受けてきた日本国内の食品生産・加工業者にとっては朗報だ。いまだ続く原発事故による風評の払拭にもつながり、被災地の復興を後押しするだろう。
日本政府はこれまで、国際的に見ても厳しい基準で放射性物質を検査し、安全を確認した上で食品を流通させ、情報公開にも努めてきた。関係機関の努力を評価したい。
また、日本の農林水産物・食品の輸出額は昨年、初めて1兆円を超えた。政府は2025年に2兆円、30年には5兆円に増やす目標を掲げている。日本にとって第4位の輸出先である台湾の輸入規制緩和で、目標達成に向けた取り組みに弾みをつけたい。
忘れてならないのは、輸入規制を続けている国に対する働き掛けだ。
福島第1原発事故の直後は最大55カ国・地域が輸入規制を実施したが、撤廃や緩和の動きが次第に広がり、昨年9月には第3位の輸出先である米国が規制を撤廃した。
しかし、現在も5カ国・地域が輸入停止措置を継続し、英国やロシアなど9カ国・地域が検査証明書を要求している。
とりわけ輸入停止措置は、東アジアの国や地域に集中している。日本の食文化とも親和性が高い国が多いだけに、規制が続いていることは残念でならない。
政府は、日本産食品の安全性が科学的な根拠に基づいて証明されていることを、あらゆる機会を通して粘り強く訴え、早期の規制撤廃につなげてほしい。