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コラム「北斗七星」
子どもが一人でも行ける無料または低額の食堂・子ども食堂は現在、全国で6000カ所を超えるに至っている(NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ調査)◆かつては「食べられない子」が行くところと貧困対策や福祉的な文脈で語られてきた子ども食堂。今では子どもだけでなく大人や高齢者も集う「子どもを中心とした多世代交流の地域拠点」として位置付けられるようになっている◆むすびえ理事長の湯浅誠氏は、子どもたちは、異年齢集団での遊び、親とは違う人たちとの交流と体験を通じて「価値観を広げ、人生の選択肢を増やしていく。その『つながりの提供』それ自体が貧困対策でもある」(『つながり続けるこども食堂』)と指摘する。卓見である◆コロナ禍は子ども食堂の風景を一変させたが、一堂に会することが困難な状況の中、約半数は弁当・食材配布活動に形態を変えて生活困窮家庭を支え続けたという◆「無縁社会」という言葉がクローズアップされた2010年代に生まれた子ども食堂は、人の縁が希薄になっていく社会の動向の中で「疎」に抗い、相互の支え合いを通じて地域の居場所・つながれる場を増やしてきた。無縁化が進む日本の地域社会に「体質改善」(湯浅氏)をもたらすであろう取り組みを応援していきたい。(中)