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山口代表の参院代表質問(要旨)
■(コロナ克服)無料検査 積極的に活用
新型コロナウイルスのオミクロン株から国民生活を守るため、実効性ある医療提供体制の確保やワクチン追加接種の前倒しなど、政府を挙げた迅速な対応が必要だ。日本経済の立て直しも大きな課題だ。「成長と分配の好循環」を実現するにはコロナ禍で拡大した格差の是正や深刻化する気候変動問題の解決など、資本主義の弊害に対応する新たな取り組みも重要だ。
ポストコロナの新しい日本の構築に向け、子育て・教育支援をはじめとする全世代型社会保障の強化や、潜在成長率の底上げを図るデジタル・グリーン投資、命を守る防災・減災対策など、将来不安を払しょくし、成長期待と持続可能性を高める改革を強力に進めなければならない。外交面では、大国間の対立が懸念される中、わが国が対話による国際協調をリードし、核軍縮など地球規模課題の解決に積極的な貢献を果たしていくべきだ。
公明党は、コロナ禍で浮き彫りとなった諸課題を克服し、安心と希望あふれる日本の未来を開くため、一人一人の力を引き出す「人への投資」を強化し、新たな活力と発展につなげていくべきだと考える。女性や高齢者、非正規雇用労働者などすべての方々が活躍できる多様性と包容力のある社会の構築をめざして、本年も全力で働いていく。
■早期治療の体制強化
新型コロナ対策は最優先課題だ。オミクロン株への対応では、予防・検査・早期治療のための体制強化を急がねばならない。ワクチン3回目接種の前倒しが喫緊の課題だ。自衛隊による大規模接種センターの早期再開など接種スピードを高めるとともに、自治体の希望する供給量を確実に確保し、混乱が生じないよう総力を挙げていただきたい。
早期発見・早期治療には、さらなる検査体制の強化が不可欠だ。発熱など症状のある人が速やかに検査を受けられるよう、診療・検査医療機関の拡大などを促進するとともに、感染が拡大傾向にある地域では、都道府県知事の判断で無料検査ができるようになったことを踏まえ、積極的な検査の活用と陽性者には医療機関への速やかな受診を周知徹底することが重要だ。
感染拡大を想定すると、宿泊・自宅療養者の増加も懸念される。政府は「すべての宿泊・自宅療養者について、陽性判明当日ないし翌日に連絡を取り、健康観察や診療を実施できる体制」を都道府県に要請しているが、地域で確実に整備できているか、確認が必要だ。承認された飲み薬を迅速に届けられる体制を急ぐとともに、パルスオキシメーター配備など病状急変の対応にも万全を期すべきだ。
■ワクチン・治療薬
これまで国内で接種された3種類のワクチンや昨年末に承認された飲み薬が、いずれも海外製であり、わが国のコロナ対策は海外に依存せざるを得ない状況にあることを厳しく直視すべきだ。今後、新たな変異株や未知の感染症が発生した場合の備えとして、ワクチン・治療薬を国内で開発・生産できる体制を整えることが大切だ。
国産ワクチンの実用化や普及に向けては、これまでの経験を踏まえ、緊急時における薬事承認制度の議論も急ぐ必要がある。ワクチン・治療薬の実用化にスピード感を持って取り組む一方、緊急時においても、安全性の確保や有効性を適切に評価できる薬事承認制度の創設が求められる。
■(経済再生)地域の脱炭素化を促進
昨年の第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)で合意された1・5度目標の達成に向けた取り組みが世界で加速する中、わが国も、グリーン化など成長分野への大胆な投資を通じ、低迷する潜在成長率や国際競争力の底上げを図り、持続可能な社会経済構造への転換と本格的な経済再生をめざすべきだ。
二酸化炭素の排出量が大きい発電部門の技術革新に加え、インフラの省エネ化やグリーン化を促す取り組みを加速すべきだ。官民が連携して、次世代の蓄電池や太陽光パネル、水素を活用した発電技術の開発に取り組むとともに、環境性能に優れた住宅・自動車の普及や充電設備の整備を急ぐ必要がある。地域の脱炭素化の促進に向け、地方自治体の再エネ設備の導入支援や地域資源を活用した分散型エネルギーシステムの構築、地域間の送電網整備などを強力に進めるべきだ。
国民一人一人の意識改革と行動変容を促すには、公明党の強い主張で2021年度補正予算に盛り込まれた「グリーンライフ・ポイント」の発行と普及拡大が有効と考える。好事例を参考に他の自治体や事業者へ展開し、脱炭素化につながるグリーン消費の大きな流れを生み出すことが重要だ。
■デジタル社会構築
首相は、成長戦略の第一にデジタルを活用した地方の活性化を挙げたが、都市と地方の格差是正でも、地方のデジタル化は極めて重要だ。今後のデジタル社会を支える5G(第5世代移動通信システム)は、自動走行や遠隔医療などの実現を可能にするとともに、高齢化や人口減少が進む地方の生活機能を維持し、地域経済を活性化させる重要なインフラとなる。どの地域でも5Gの恩恵を実感できるよう、環境整備を急ぐとともに、地域課題の解決のため効果的にデジタルを活用できる人材を地方でも育成しなければならない。
マイナンバーカードの普及拡大もデジタル社会の構築に向けた大きな課題だ。今月から開始した「マイナポイント第2弾」は、カードのさらなる普及拡大をはじめ、ポイントによる消費喚起などに資する重要な取り組みだ。高齢者らが円滑にカードを取得できるよう、申請手続きの支援や交付体制の強化が必要だ。カード取得者が漏れなくポイントを利用できるよう、「マイナポイント手続スポット」の周知徹底やデジタル活用支援員の増員など、各地域できめ細かなサポート体制を強化すべきだ。
■賃上げの課題解決
首相は、分配戦略の第一に賃上げを掲げるが、この30年間、日本の実質賃金は伸び悩んでおり、政府として要因を今一重、分析すべきだ。公明党が強く主張し、従業員の教育訓練費を増やした場合に法人税の控除率をさらに引き上げる仕組みが22年度税制改正に盛り込まれた。企業が賃上げの原資を生み出せるよう、グリーンやデジタルなど成長分野を担う人材の育成につなげるべきだ。
企業間の構造的な取引慣行にメスを入れることも必要だ。下請け企業からは、材料価格や労務費の上昇分が取引価格に転嫁されないなどの切実な声が寄せられている。デジタル化の進展に伴い、取引条件の不透明化や取引構造の複雑化も進んでいる。下請けGメン(取引調査員)による実態調査など既存の対策強化と、独占禁止法などのあり方も抜本的な検討を行うべきだ。
■女性活躍の推進
内閣府によると「役員に女性がいる企業のパフォーマンスは高い」とされる一方、企業の女性役員比率は低く、給与の男女格差も解消されていない。女性リーダーから話を伺うと、口をそろえて「社会における意識改革が必要だ」と強調される。企業や組織の男性リーダーが率先して意識改革の先頭に立ち、男性も家庭や地域への参画が当たり前の社会へ取り組むべきだ。
公明党は女性の活躍を広げ、多様性が尊重される社会をめざしている。コロナ禍では、さまざまな機会に女性の悩みを伺ってきた。特に女性委員会は、昨年、一昨年と全国で計250回を超えるウイメンズトークを開催し、苦闘する女性の声を聴き、生理用品の無償提供などの実現に結び付けてきた。私も話を伺う中で実感したのは「女性の経済的な自立」が何よりも重要だ。公明党は、不足するデジタル人材の裾野を広げ、働く場を確保し、新しい働き方を実現するために「女性デジタル人材育成10万人プラン」を提案している。
■(全世代型社会保障)子育て・教育 中長期的に充実を
コロナ禍が長期化する中、子どもたちを力強く支援し、その未来を開く観点から、21年度補正予算に、子ども1人当たり10万円相当の給付が盛り込まれたが、これは特例的な支援策だ。子育て支援に関する日本の公的支出は、対国内総生産(GDP)比で経済開発協力機構(OECD)諸国の平均値を下回り、国際的に十分な水準とは言えない。子育て・教育を国家戦略に据え、恒久的な支援策を中長期的に充実するべきだ。
公明党は今月から全国でアンケート調査を実施し、その結果を踏まえながら、子育て支援策の充実に向け「子育て応援トータルプラン」を策定する。首相は、子ども政策を、わが国社会のど真ん中に据えていくため「こども家庭庁」を創設すると述べたが、その役割や課題について国民に分かりやすく説明すべきだ。政府の「全世代型社会保障構築会議」などで、子育て・教育支援の中長期的な充実を議題とし、検討を開始すべきだと考える。
■教育訓練の充実
「人」への投資で重要となる教育訓練について、厚生労働省などの調査によれば、日本企業のOJT(職場内訓練)以外の人材投資は対GDP比で諸外国と比べて著しく少なく、社外学習・自己啓発を行っていない方の割合も半数近くに上る。昨年11月に決定した経済対策では「3年間で4000億円の予算を大胆に投入する施策パッケージを講じる」とされている。労働者や企業など現場のニーズに即した制度設計を行い、オンラインでの受講などデジタル時代にふさわしい内容にすべきだ。求職者支援制度など非正規雇用労働者などのセーフティーネット(安全網)強化も重要だ。
■地域医療構想
本年から団塊の世代が順次、後期高齢者入りし、医療・介護ニーズはますます高まる。政府は、病気や介護が必要になっても、住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、地域医療構想の実現や地域包括ケアシステムの構築に取り組んでいるが、新型コロナにより、その必要性は一層高まった。都道府県は再来年度に次期医療計画や介護保険事業計画を策定するが、国は計画策定に当たり、大きな方向性を示してもらいたい。
当面は、25年をめざした地域医療構想などを着実に進め、その先の中長期的な視点に立った医療・介護の提供体制の再構築についても、全世代型社会保障構築会議などで議論を深め、わが国の進むべき明確なビジョンを提示すべきだ。
■孤独・孤立対策
孤独・孤立の問題が、コロナ禍で顕在化・深刻化している。10代・20代の自殺者数は20年度に約2割増加し、児童生徒の自殺者数も過去最多を更新した。ヤングケアラーをはじめ、当事者の立場に立った、きめ細かな支援が不可欠だ。
政府が昨年12月に初めて策定した「孤独・孤立対策の重点計画」には、公明党の提言を踏まえ「当事者の目線や立場に立って、切れ目がなく息の長い、きめ細かな施策を推進する」ことが明記されている。今後、「重点計画」の着実な実行が大切だ。住まいのセーフティーネット強化や、ワンストップの相談窓口などの一元的な相談支援体制、相談と支援をつなぐ体制の整備、NPOなどが利用しやすい支援のあり方など「重点計画」に明記された検討課題について、早期に検討を開始すべきだと考える。
■(外交)ワクチン支援 力強く
核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議が、オミクロン株の影響で4度目の延期となった。しかし、核保有国の米中ロ英仏5カ国が核戦争の回避や核不拡散への協力を鮮明にした共同声明を発表したことは、世界の核軍縮を進める上で歓迎すべき出来事だ。声明を、今後の同会議の具体的成果や、核兵器禁止条約における核保有国の参画につなげることが極めて重要だ。唯一の戦争被爆国であり、核保有国と非保有国の橋渡し役を自負する日本が、その役割を積極的に果たすべきであり、プロセスをしっかり示すことが、賛同者を広げることにつながる。
公明党は、核禁条約締約国会合への日本のオブザーバー参加を訴えてきたが、今回の施政方針演説で首相は「核兵器のない世界に向けた国際賢人会議」を立ち上げ、第1回会合を年内に広島で開催すると述べた。こうした試みに賛同する。賢人会議は具体的に何を目標にいつ、どのような方々の参加を得て開催するつもりか。そのことを含め、核廃絶へ日本の役割と貢献について答弁を求める。
■安全保障対話
ウクライナ情勢の緊張緩和に向けて、米ロや欧州諸国などが加盟する常設の欧州安保協力機構(OSCE)で協議が行われた。アジアには、そのような常設の枠組みは存在しない。今後、アジアで緊張が高まった際、外交によって平和裏に問題を解決するため、OSCEのような取り組みが必要と考える。日米同盟を基軸とした上で、米中ロなども参加する形で、アジアにおける多国間の安全保障対話の枠組みづくりを日本が主導して検討してはどうか。
■国際保健で貢献
首相は昨年12月、ビル&メリンダ・ゲイツ財団のビル・ゲイツ氏と協議し、同財団との連携強化の考えを示した。日本はこれまで、公明党が後押ししてきたCOVAX(国際的なコロナワクチン調達の枠組み)への支援をはじめ国際保健分野で世界をリードする貢献をしてきたが、本年もCEPI(感染症流行対策イノベーション連合)やグローバル・ファンドの増資会合が開催される予定だ。Gavi(途上国のワクチン接種を推進する国際組織)、ポリオ撲滅なども含め、これまで以上に力強い支援が必要と考える。
施政方針演説で首相は、国際開発協会への拠出や第8回アフリカ開発会議(TICAD8)にも言及した。今や開発途上国における感染症対策などグローバルヘルスへの取り組みは、国内・国際社会、ひいては経済や安全保障にも大きな影響を与える重要課題だ。中長期的な戦略をしっかりと持った支援も必要だ。
■(防災・減災など)流域治水対策 本格的に
昨年の流域治水関連法の完全施行を受け、本格的な取り組みがスタートする流域治水について伺う。近年の台風災害では、水害リスクの情報が明らかになっていない中小河川や下水道などがある地域で、多くの浸水被害が発生した。22年度予算案では、防災・安全交付金による財政支援が強化され、中小河川におけるハザードマップ(災害予測地図)などの水害リスク情報の充実や整備、市街地の浸水対策の加速が期待される。
水害リスクを踏まえた、まちづくり・住まいづくりの積極的な推進も盛り込まれている。次の出水期に向けた対策を加速し、流域治水の新たな対策が効果を発揮できるよう取り組みをお願いしたい。
■盛り土対策
昨年、熱海で発生した土石流災害を受けて実施した盛り土の総点検を踏まえ、21年度補正予算や来年度予算案に、災害危険性が高い盛り土の撤去を行う地方自治体への支援策が盛り込まれた。昨年の臨時国会での私の質問に、政府は、対策強化のための新たな法整備を進める考えを示した。住民の命と暮らしを守ることを第一に、危険な盛り土などの造成に係る規制を抜本的に強化し、再発を確実に防止する仕組みが必要だ。
斜面に設置された太陽光パネルなどによる土砂災害も相次いでいる。太陽光施設を巡る住民トラブルや、災害リスクの高い地域での再エネ導入を条例で制限する自治体も増えている。国として安全対策のあり方に、さらなる検討が必要だ。
■気象アドバイザー
私は、地域防災力を強化するため、気象防災アドバイザーの周知と活用を訴えてきた。先月までに全国で87名が、気象防災アドバイザーとして委嘱され、今月17日、「気象防災アドバイザー推進ネットワーク」も設立された。群馬県渋川市では気象防災アドバイザーが、昨年8月の大雨災害で、早期の避難情報の発令などを市に助言するとともに、平時も、地域防災計画の見直しや市民向けの防災講座に携わっている。職員の人材育成や住民の防災意識の向上にもつながると高い評価を得ている。
先日、南太平洋のトンガ付近で発生した火山噴火に伴い、日本でも津波が観測され、警報・注意報の発出を巡り混乱もあった。この教訓を生かし、今後は、こうした事態の予測や防止、避難などについても、気象防災アドバイザーの活用が対策の一助になると考える。
■離島振興法の改正必要
公明党は、全国と地方のネットワーク力を生かし、各地の離島で行った現地調査を基に、党として離島振興ビジョンを策定するなど法改正を含めた離島振興に全力で取り組んできた。しかし、人口減少の進展や離島航路の維持など従来からの課題に加え、コロナ禍の影響による打撃も大きく、深刻な状況が続いている。
一方、近年、魅力的な地域資源を生かした農水産品のブランド化や、交流・関係人口の増加にもつながる離島留学など新たな取り組みも広がりつつある。遠隔医療の導入やリモートオフィスの整備などデジタル化の推進とともに、離島の持つ豊富な地域資源を活用した再生可能エネルギーなどグリーン産業の展開による雇用創出も期待されている。離島振興法の期限が22年度末に到来することから、延長を含めて新たな視点や対策を盛り込んだ法改正を行うべきだと考える。
岸田首相らの答弁(要旨)
【岸田文雄首相】
<3回目接種>高齢者への接種加速とともに一般の人も1カ月前倒しし、余力がある自治体はさらに前倒しを行う。自治体に大規模接種会場の設置などを要請し、政府として後押しする。
<国産ワクチン>新たな創薬手法による産学官の実用化研究を集中的に支援し、世界トップレベルの研究開発拠点、ワクチン製造拠点の整備に取り組む。
<経済再生>グリーン化の分野への投資を早急に少なくとも倍増させ、脱炭素の実現と、新しい時代の成長を生み出すエンジンとする。
<マイナポイント>申し込み方法などの講習会を来年度は約3000カ所に拡充するなど身近での取り組みを強化する。
<女性>女性デジタル人材育成を含む「女性の経済的な自立」など四つを柱とする“女性版骨太の方針”を夏までに取りまとめ、女性が直面する課題を政府全体で一つ一つ解決していく。
<全世代型社会保障>子ども政策をさらに進めるために必要な政策について、幅広く検討を進め、安定財源の確保を図りつつ支援を充実させていく。
<核廃絶>国際賢人会議では、核兵器国と非核兵器国、核兵器禁止条約の参加国と非参加国からの参加者が、各国の立場を超えて知恵を出し合い、核兵器のない世界の実現に向けた具体的な道筋について、自由闊達な議論が行われるようにしたい。
<気象防災アドバイザー>周知普及を図るため、自治体トップへの働き掛けを行う。人材を確保し、自治体が活用しやすい環境づくりを進める。
【斉藤鉄夫国土交通相(公明党)】
<流域治水>浸水頻度を示した水害リスクマップを新たに整備し、浸水が想定される深さ以上に家屋の居室の高さを確保する区域の指定や、企業の事業継続計画の策定に活用できるよう取り組んでいく。