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設立30周年迎えた「骨髄バンク」
移植増へ普及めざすドナー休暇制度
白血病などの患者の治療へ、骨髄などの提供を仲介する「日本骨髄バンク」が昨年12月で設立30周年を迎えた。これまでに実施できた非血縁者間の移植は2万6000件を超えているが、移植を望みながらも受けられない患者は少なからず存在する。移植できる数を増やし、そうした患者をなくしていくため、同バンクが普及をめざすのが、骨髄を提供するドナーが採取などの際に仕事を休めるようにする「休暇制度」だ。公明党は長年、推進している。
仕事での提供辞退を回避
導入企業、近年拡大し700超に
「上司の理解だけでなく、職場のチーム全員が業務をフォローしてくれ、安心して休めた」と話すのは、ジブラルタ生命保険株式会社の河原田宏司さん(36)。2019年5月、ドナーに選ばれたことから、会社が05年8月から導入しているドナー休暇制度(年10日以内、半日単位で取得可能)を利用。採取のための入院(3泊4日)と、その前後の通院のために約1週間、職場を離れ、無事、骨髄を提供することができた。
登録しても…
「ドナー登録」すること自体は、各地の献血ルームなどで予約不要でできるので、比較的ハードルは低いが、実際にドナーとして骨髄を提供するのは容易ではない。
骨髄を必要とする患者とHLA型(白血球の型)が適合してドナーに選ばれて提供する場合、通院を重ねた上で、入院による採取に至るというプロセスを経る必要があり、仕事などを休む必要が出てくるからだ。20年度に健康上の理由以外で辞退した人のうち、4割以上が「仕事など」によって都合を付けられなかったという。
そこで、骨髄バンクは、これらの期間を有給休暇ではない「特別休暇」として認めるドナー休暇制度の導入を企業などに働き掛けている。
19年2月、競泳・池江璃花子選手が白血病を公表したことで、骨髄バンクへの関心が一気に高まった。国の後押しを受けて、同バンクは専門職員を企業・団体に派遣して制度の意義を訴える全国的な活動を展開。その結果、休暇制度を導入する企業・団体は、18年度末の358から、今年1月14日時点では、712へと、ほぼ倍増している。
低い優先順位
一方、導入に慎重な企業の事情は“コロナ禍で経営状況が悪化して人手が足りない”“育児・介護休暇を望む従業員の方が多い”など、さまざまだ。ドナー休暇制度の優先順位が低いことが浮き彫りになっている。
日本では、毎年約2000人以上が移植のための骨髄を必要としているものの、そのうち約4割の患者に行き届いていないという現状がある。
骨髄バンク広報渉外部の渡辺良輝さんは「一人でも多くの患者を救うため、数日でもいいので、ドナーが仕事を安心して休めるようにしてほしい」と訴える。
全国7大学に「公欠」
また、骨髄などを提供するために学生が入通院で授業を欠席しても成績評価に影響しない「公欠制度」を導入している大学は全国に7校ある。このうち、島根県立大学では今年度から始めた。
この制度を使って昨年春に骨髄を提供した4年生の石原純花さんは「病院は平日しか受診できず授業を休まないといけないので、すごく助かった」と語る。
ドナー登録は18歳から可能だ。健康状態の良い若いドナーからの骨髄は、移植後の治療成績が良い傾向にあり、若年層でのドナーの広がりが期待されている。それだけに大学生や専門学校生へのドナー登録の推進や、そのための環境整備につながる公欠制度の普及が求められる。
公明、一貫して推進
自治体独自の助成金支給も
公明党は、休暇制度の導入を一貫して訴えてきた。骨髄バンクが設立された翌1992年6月には、茨城県取手市が市議会公明党の提案を受け、全国初の市職員を対象とした休暇制度を導入した。93年には公明議員の主張で、国家公務員の「骨髄ドナー特別休暇」が制度化され、大企業を中心に民間にも広がった。
また、自治体がドナー本人やドナーが勤務する事業者に対し、骨髄などの提供で入通院した日数に応じ、1日当たり一定額を支給する「ドナー助成制度」についても、公明党が各地で推進。今年1月14日までに全国で800を超える自治体にまで拡大している。例えば、埼玉県や徳島県などでは全市町村が導入済みだ。