ニュース
コラム「北斗七星」
今月、作詞家の喜多條忠氏の訃報に接し、氏の手による『神田川』のメロディーが浮かんだ。1973年にフォークグループ「かぐや姫」が歌い大ヒットした名曲だが、その年のNHK紅白歌合戦への出場を辞退している。<二十四色の クレパス買って>の歌詞にある「クレパス」が商品名のため、「クレヨン」に変えるよう求められ、「それなら出ない」と◆そんな時代もあったなと、51年から70年続く「紅白」を振り返ると、その時代、その年の世相を映し出している。東日本大震災が起きた2011年は、トリを務めたSMAPが軽快なリズムに<笑顔抱きしめ 悲しみすべて 街の中から消してしまえ ~ 世界中がしあわせになれ!>(『オリジナル スマイル』)と思いを込めた◆紅白史上初の無観客開催となった去年、テーマは「今こそ歌おう みんなでエール」。嵐がメドレーで歌った『カイト』のサビは<口ずさもう 彼方へ向けて 君の夢よ 叶えと願う>◆テレビ文化論が専門の社会学者・太田省一氏は、日本人が長年、「紅白」を見続けてきたのは、「そこに<安住の地>を見出してきたから」(自著『紅白歌合戦と日本人』)と論じている◆今年の「紅白」のテーマは「カラフル」。コロナ禍で日常の景色が変わっていった今、どんな彩りの<安住の地>を見せてくれるだろうか。(三)